第10話 襲撃

デブリーフィングは散々だった。戦術の甘さ、それぞれの動き、反省点は数多い。

「では、解散」

人間の指揮官の合図で、フレンズ各員が立ち上がる。戦場ではないここでは、フレンズたちはダラダラしたものだ。そのあたり、人間の自衛隊とは大きく違う。フレンズに規律を求めるのが無謀だというのは、周知の事実だ。

「でもよー、いくらなんでも、セルリアンがあんな作戦みたいなことするかね?あれは陽動を使った各個撃破だろ」

🌟は不満タラタラだ。

「まあでも、そのうちそんなセルリアンが出るかもしれませんよ」

アムールトラは書類をトントンと揃えながら立ち上がる。

「そりゃそうだけどさ、敵を過大評価?するのもよくないんじゃないの?判断を誤るぜ?」

セルリアンの戦力、戦術をどう評価するか。実戦以上に困難なミッションかもしれなかった。

ビイイイィ

けたたましくサイレンが鳴った。

『中央指揮所より達する。エリア2-4にセルリアン出現。中型2、小型10以上。現在ラッキービーストが観測中』

「聞いての通りだ。出撃」

「小隊長、あいつも初陣ですな」

「ああ。ちょっと前にはこんな…いや」

「ちびっ子でしたもんね」

「先任、出撃だ。私語厳禁」

「へーい」

尻尾をカタカタと鳴らしながら、先任伍長のサイドワインダーは隊員たちの後を追った。


「アグレッサー部隊を主力とし、我々若年兵は遊撃だ。小型を受け持ち、エリア外への漏出を防ぐのが主任務だ。倒すことより足留めを徹底」

現場に向かう車両は、民間会社のバンに擬装されている。普通の電気自動車だが、パークらしく可愛らしいラッピングされた車だ。セルリアン出現エリアまではもうすぐだ。車内に緊張が走る。もう一台のベテラン部隊は、きっと鼻唄でも歌っているに違いない。

キキイイッ。耳障りなブレーキ音と同時に、部隊員はベンチシートから振り落とされた。急停止だ。

ズン、と低い音が響く。

「降車戦闘!」

脳しんとうを起こした小隊長に代わって先任が降車を指示する。後部ドアを開けると、アムールトラは転がるように飛び降りた。

目を疑う惨状だ。指揮車とアグレッサー部隊のバンが黒煙を上げている。その向こうには、見たこともない大きな影があった。

「大型…セルリアン…」

誰ともなしに漏れた言葉に、我に帰る。アグレッサー部隊がどうなったかはわからない。だが、少なくとも降車できる状況ではないようだ。先任伍長のサイドワインダーも、唖然としているだけだ。

「先任、私が大型を引き留めます、その間にアグレッサー部隊を!」

アムールトラは叫んだ。アグレッサー部隊はドアの故障で外に出られないだけかもしれない。彼らが戦力に復帰すれば、形勢は逆転するはずだ。

「こっちだ、一ツ目野郎!」

アムールトラは跳んだ。

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