第1話 おえかき
「せんせー、赤のクレヨンくださーい」
フードを被った幼児が元気に手を挙げる。その横では、帽子を被った子が熱心に絵を描いている。
「はい、クレヨン。つっちーちゃんは赤が本当に好きなんだね!まーちゃんは、なんの絵を描いてるのかな?」
先生が覗き込むと、まーちゃんと呼ばれた子は慌てて絵を隠そうとする。
「…はずかしーから、できるまでみないで」
「はいはい。完成したら見せてね?」
「…うん」
先生はくすりと笑う。まーちゃんの小さな手では隠しきれないほど、画用紙いっぱいに黄色い髪の女の子が描かれていた。
黄色い髪の女の子。きっと今、園庭を元気に走り回っているあいちゃんだろう。ここはフレンズ保育園。ジャパリパーク勤務者の子供と、アニマルガールと呼ばれるヒト化動物のうち、幼獣と思われる子を試験的に一緒にみている。今のところ事故は起こっていないし、アニマルガールと一緒にいることで、人間の子供の情操が豊かになると好評だった。
元気なあいちゃんと内気なまーちゃんは、性格は正反対でも不思議と仲が良かった。遊び方が違うから、遊んでいる時は別々にいるけれど、お遊戯の時も、お昼ごはんやおやつの時も、ずっと一緒だった。そしてまーちゃんの絵は、だいたい黄色だ。
「まーちゃん!みてみて!」
外にいたあいちゃんが駆け込んでくると、まーちゃんに何かを見せた。
「わっ」
まーちゃんは少し驚いて後ずさったが、思い切って受け取ったようだ。
「せんせー!」
二人は先生のもとに走っていく。と、悲鳴が響いた。先生は虫が苦手なのだ。
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