絶望峠百極地獄
長月 有樹
第1話
怒りが咲き乱れていた。
何怒っているのかは分からない。けれど乃木原加奈子は怒っていた。
何怒っているのか考えた。銀行貯金の残高が4桁を切った事。一つ有名になってやろうと思ったTik Tokでリアクションが凪の状態であったこと。Twitterの多くの人間のエゴと自意識のぶつかり合いが顔を覗かせていること。働き方改革がバイトのファミレスでは一切適用されず先週7連勤だったこと。寧ろことごとくバイト仲間が一人、また一人と消え去りどんどん負荷がじわりじわりと忍び足で近づいてること。体壊すわ。絶対に面白い小説を書きましたとTwitterでリンクされてた小説が独り善がりの糞と言うには糞には失礼だというクオリティであったこと。大学で代返を依頼できる友人もおらず孤独であったこと。そして自分で授業に毎日出てやるという気概も無く、五月雨のように単位を落としていったこと。このままでは三年生へ進級するのも危ういこと。
と原因を掘れば掘るほど湯水のように湧き出てくるので虚しさが押し寄せ、そうだスーパーで買ったパインパンがゲロが出るほど不味かったとパインパンに怒りの責任を全て押し付けた。
そうとなったらこのマグマのように煮えたぎった怒りを外へ。一刻も早く外へ解放させねばなるまい。そうしなければ自分が真夏の炎天下で棒からアスファルトとへこぼれ落ちるアイスキャンデーのようになってしまうから。それはきっととても悲しい事だから何とかこの怒りを外へ押しやらねばと思い玄関へと走り出す。
自分のだらしなくいい加減な性格ゆえ、踵を踏み潰したコンバースのスニーカーをサンダル上にはいて、ガァンと勢いよくドアを開ける。それと相反してか、ペタリペタリとのったり走り出す。アパートの階段を降りる頃には日頃のバイト疲れなのか、歩き出していた。
この怒りをどうしたら良いのか?とりあえずパンツのポケットからくしゃくしゃになったセブンスターのソフトパックを取り出し、くしゃくしゃになったタバコに火を付け一服をして考えながら歩く。
空も紅く滲む夕焼け。ぷかぁと紫煙を揺らす。向かいからシェパードを散歩させているピンクのジャージの如何にも金持ちのマダムな叔母様にあーやだやだ副流煙なんてあーやだやだとすれ違いざまに嫌味をぼそりと言われた事に相手に気づかれないよう中指を立てた。オリンピックぶっつぶれろとボソリと呟く。
どいつもこいつもフランスもおもんねえな。サブいんだよ!!とまた怒りの竈に薪が焼べられたが冷静に考えると自分が一番おもんないなと若干冷却される。
考える。加奈子は考える。この怒りをどう発散させれば良いのか。考える。普段は使わない脳を焼き切れるくらいに㌍を使って考えぬく。ストレス発散なんて岩盤浴をキメれば霧のようにすぐに青い空へと溶けていく。
けどそんなんじゃ駄目だ。私は変われない。私は変わりたい。私は今のここを抜け出したい。私は誰かに愛を与えたい。そしてバレンタインのチロルチョコでホワイトデーに高級マカロンをもらう。そんなような百倍返しの愛が欲しい。誰かに愛されたい。私だけのアイラブユー、オンリーユーを誰かに耳元で囁かれたい。
よし世界を救ったろう。
加奈子は決意した。要は誰かにチヤホヤされたいから良いことをしようってことだけである。シンプルに言うと。加奈子はそこそこ馬鹿だった。加奈子の考える力は受験勉強で使い果たした。愛用していたシャープペンシルとともに全ての考えるをセンター試験で足きりされた時に置いてきた。
そうと決まれば世界を救おう。今日から救おうと決意して、タバコの吸い殻をポイ捨て、靴底で揉み消す。もうこの行為自体で良いことの真逆をいってる事に加奈子は気づかない。
「ヒッタクリー!!誰か捕まえて-!!」
女性の声が叫び声が聞こえる。前を向くとヘルメットをかぶりスクーターにまたがってる男が女性ものハンドバッグを手にしている。紛れもないひったくりだ。
早速、世界を救えるチャンスがやってきた。と加奈子はコンバースのスニーカーを道路脇に履き捨て、スクーターに乗るひったくり犯へと駆け出す。
数秒後、加奈子のドロップキックが見事に決まりひったくり犯を捕まえる事に成功。そして過剰な暴力により後に来た警察に連行される。
取り調べを受けてる最中、加奈子の瞳は光に満ちていた。
世界を救うプロローグが始まった。私は世界を救う。そして愛されるめちゃモテ女子になる。
怒鳴り散らす警察の声は耳には入ってこず、何かが始まった希望に胸を高鳴らせながら、いつになったらカツ丼食うか?て言われるのだろう?とまだかまだかと待ち望んでいた。
※この小説はソシャゲのガチャで課金しすぎて、あまりにも自分に対してムカつき過ぎてストレス発散がてら書いたモノでーす(^o^)
お し ま い け る ♪
絶望峠百極地獄 長月 有樹 @fukulama
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