魔法と知識で科学チート! ~ 開拓村の奴隷発明家

めがねびより

第一部 魔法世界で文明開化

プロローグ


 後期試験が終わってようやく訪れた待ちに待った休日。


 僕は、愛車のスーパーカブ(50cc)にまたがり、山奥へと走らせる。

 山奥にある河川敷でソロキャンプをするのだ。

 原付バイクの後ろには、テントや寝袋などを縛り付け、背中に背負ったリュックサックには、実家のキッチンから持ち出した缶詰やパスタなどの食糧、そして15インチのノートパソコンが入っている。

 冬の平日ということもあってか、たどり着いた鉄橋下にある河川敷には僕以外、誰もいない。

 僕は慣れた手つきでテントを組み上げて、中に荷物を放り込む。

 次に、その辺に落ちている小枝や乾燥した流木を集め、井桁状いげたじょうに。


「今日は乾燥してるし、試してみるか」


 もろくなった木板にナイフでくぼみを掘り、木の棒を押し当てた。

 そのまま棒を両手てはさみ、勢いよく廻し続ける。

 5分ほど何回か挑戦してようやく火煙が立ち始めた。

 すぐさま、僕は息を吹きかけて新聞紙に火を移す。


「まだまだだなぁ~」


 赤々と燃えるたき火に手を当てながら、僕はつぶやいた。

 もちろんライターやガスバーナーも持ってきていたが、僕はネット動画で見たガマ三郎氏のサバイバル術にあこがれて、原始的な火おこしに挑戦してみたかったのだ。

 ぼーっと、たき火を眺めていたら、いつのまにかすっかり日も暮れていた。


「やっべ! 夕食準備しなきゃ」


 僕は慌てて、たき火の上に金網をセットし、その上に、あらかじめアルミホイルに包んできたジャガイモを載せて焼く。

 次に飯盒はんごうにペットボトルの水を注いでからパスタを割り入れ金網の上へ、しばらくしてから、煮たってきたころ合いを見計らってウインナーを投入。

 飯盒の水がわずかになってきたら、粉状のパスタソースを振りかけてから混ぜ合わせる。


「さぁ、喰うとしようか…。あ! その前に」


 僕はズボンのポケットからスマホを取り出し、カメラアプリを立ち上げる。

 ウインナーをフォークに差し、わざとらしく口元へ持ってきた自撮りをSNSへアップロード。

 一通り写真を載せた後は、すぐさま飯盒からそのままパスタをかきこむ。

 熱々のジャガイモは、ナイフで半分に割り、チューブ入りバターを垂らす。

 すぐにバターは溶けだして、食欲を誘う香りが拡がる。


「フハ、フハ、アツ…! うまっ!」


 ゆったりと食事を楽しもうという計画だったが、食べ始めたら勢いが止まらず10分で平らげてしまった。

 たき火を前にして食後のお茶を飲みながら、先ほどアップした写真へのコメントをチェックする。


 ― うまそー


 ― 怪しい儀式か何かですかな?


 ― 後ろに幽霊が!


 ― 〇るキャンに影響されたなこのニワカめが!!


 やはり食べ物のアップは喰いつきが良いな。などと、ほくそ笑みながらスマホを眺める。

 そのあとは、いつもチェックしているサイトを巡回することに。

 たき火も消えかけてきた頃。


「テント入るか」


 そう呟いた後、少し離れた所でトイレを済ませてからテントに入った。

 カセットガスのストーブを点火し、寝袋に入ってノートパソコンを立ち上げる。

 あらかじめダウンロードしておいた映画やアニメを見て過ごしていたら5時間ほど経っていた。

 パソコンを閉じて、寝る支度をする。


「寝る前に悶々と考えてること、が夢に出てきたりするんだよなぁ……」


 寝袋に潜り込み、最後に見たハーレムものアニメのどのキャラが萌えるかを考えながら眠りにつく。

 この時の僕は、次に目を覚ますときには、何も持たずに(パンツ一枚すら)異世界に飛ばされているとはまったく予想だにしていなかった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る