閑話 グラビア撮影依頼

「うぅ……」


 ブルーがアストライアの戦闘指揮所の椅子に膝を抱えてうずくまっている。

 狙撃の時のときのやらかしが原因だ。


「そんなに落ち込まないの。フェアリー・ブルー」

「さりげなく追い込むのやめてくださいジェニー」


 そんな彼女たちをコウとにゃん汰とアキ、エメが微笑ましくみている。

 先ほどまで通信で話していたバリーも、そんなブルーを可笑しそうに見ていた。珍しいらしい。


「大変好評よ? おかげでTV出演やラジオゲスト依頼が殺到している。マネージャーとして鼻が高いわ」

「誰がマネージャーですか。私たち、ユリシーズの自衛軍ですよね?」

「ユリシーズがスポンサーにつくぐらいの人気アイドル間違いなしってことね!」

「勘弁して…… お願い……」

「真面目な話、グラビアの話まで来ているからね?」

「すぐに断ってください!」


 必死なブルー。

 だが、コウが食いついた。


「グラビア! いいじゃないか。見たいな」

「背中から撃つわよ、コウ」

「まあまあ。コウだって男の子なんだ。綺麗な女の子のグラビアぐらいみたいよな」


 バリーが茶化すように援護する。


「そういう男子トークはよそでやってください」

「正直みたい気はする。ほら相方の女の子の、普段見ることがない面をみたいなーなんて」


 相方と思わず使ってしまう。言ってみて気恥ずかしくなったのか、そっぽを向いた。

 そのせいで気付けなかったが、若干ブルーの頬が赤くなり、にゃん汰とアキの額がひくついている。


「オーケー。ボス。マネージャー権限で受けましょう!」


 その隙を見逃すジェニーではなかった。


「助かるジェニー」

「何が助かるんですか。だいたい私みたいな人形みたいな女より、谷も山もあるジェニーのほうがグラビアに向いているわ」

「私は歳が歳だしね?」

「黙りなさい。年齢っていったら私なんてどうなる……の……」


 しまった、と声が聞こえてきそうなブルー。

 

「そうか。ブルーはネレイスだから」


 外見が14、15歳ぐらいだ。だが、年齢を考えると倍近いはずだ。

 今まで気にしたことはなかったコウだが、改めて考えるとやはり気になる。


「そうね。ブルー先輩にはお世話になりました。私の先生はブルーなんだよね」

「墓穴を掘ったな、ブルー。らしくない。コウに相方といわれてよほど動揺したんだな」

 

 微笑むバリー。これは良いことなのだ。


「ふ、ふん! そうですよ。今年で28です」

「傭兵歴も15年近いよね。ブルー。懐かしい。しごかれたもの、私」


 ブルーの昔話を教えてくれるのは、ジェニーなりのサービスだろう。

 隠すようなことでも恥ずかしいことでもない。


「ネレイスだと問題ないじゃないか。実年齢だと……」

「コウ。女の子に年齢の話はしないこと。デリカシーがない。私は千歳以上になる。もっというなら、それ以上年齢に触れると、にゃん汰とアキも傷つく。そこまで」


 エメがぼそっという。圧があった。


「わ、わかった……」


 鬼気迫るものを感じ、これ以上この話題に触れることはやめたコウ。


 女性陣がエメを抱きしめた。


「なんていい子なの、エメ」

「エメ。えらいにゃあ。今日は一緒に寝るにゃあ」

「エメ。今日何か食べたいもの、ありますか?」

「裏ボスもエメ提督には形無しね」


 そんな彼女たちをみながら、バリーが告げる。


「ブルー。しばらくは要塞エリアでラジオ放送が主任務になるからな。よろしく頼む」

「え? なんでですか?」

「お前の放送場所で作戦場所がダダ漏れになるからな。決戦時にはいいんだが」

「た、確かに。変に注目を浴びてますからね。私がラジオしている場所がP336なら、動いていないと判断される可能性すらあると」

「そういうことだ。グラビア撮影に関しては戦闘が終わってからでいいさ」

「しません!」


 断言するブルー。


「えー……」

「えー……」


 ジェニーとコウが不満の声を漏らす。


「だいたいですよ。コウ。私がカメラマンにいたずらされたらどうするんですか。そうこうこと、多いと聞きますし? いいんですか?」


 コウが顔色を変えた。


「ジェニー! 撮影時は女性スタッフ厳選極力ファミリア、ジェニー同伴で。それ以外は断ろう! 青と白の2トーン背景だけはやめてくれ! 自然な奴で!」

「最後のだけ意味はよくわかんないけどオッケー、ボス! 決まりね!」

「決めないで?!」


 いつまでも続く言い争い。バリーはエメ、にゃん汰、アキたちに目配せをする。あとは任せた、と言いたげだ。

 気が付いたらバリーの通信は切れていた。

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