Reunion

藤ノ宮コウジ

第1話

 俺はある日、不思議な人に出会った。

 どこが不思議かと訊かれれば、なんとも問答し難い。

 しかし、その人は不思議だった。


 

 授業終了のチャイムが鳴り、昼休みを迎える。

 俺は昼食を済ませ、日課である図書室に向かった。

 俺こと大鳥新おおとりあらたは読書好きの高校生だ。俺が通っている高校の図書室は中学校や他校に比べ蔵書数がとても多い。一度、どのぐらいの本があるのか、司書さんに尋ねると「7万冊」と応えた。この辺りの学校では1番だそうだ。

 それは、さておき俺は毎日、昼休みにここに来て本を読んでいる。

 

 教室を出て、階段を降りてすぐの所に、図書室はある。

 割と堅固けんごな扉が特徴だ。なぜそのような扉なのかは俺もよく分からない。

 その扉を開け、中に入る。

 図書室独特な静けさや匂いが俺を迎えてくれた。

 カウンターにいる司書さんに一礼し、本棚へ向かう。

 本を一冊、手にとり机に足を運ぼうかと思った時、既に窓側の机に人が座って読書をしていた。

 特段、不思議なことでもないが、俺はいつも一番にここに来ている。

 今日は、偶然だろうと思い、読書の邪魔にならないように出来るだけ音を立てずに席に座る。

 しばらく、経って司書さんが席を離れ、用事かなにかで図書室をあとにした。

 その直後、窓側に座っていた人が、俺に話しかけてきた。

 「こんにちは。あなたは毎日、ここに来ているの?」

 「はい、一応」

 本をひとまず閉じて、返事をする。

 だが、よく見るとその人はかなりの美人だった。

 つやのある髪で、大人っぽいオーラをかもし出し、頭もよさそうで運動もできそうな雰囲気。まさに才色兼備、と勝手に憶測。

 制服のリボンの色を見ると、俺よりひとつ上の学年の3年生だ。

 しかし、こんな人この学校にいた覚えがない。

 俺は1年生、2年生の計2年連続じゃんけんで負け風紀委員をしている。風紀委員の仕事は1週間に1度、朝から校門に立って挨拶運動をすることだ。

 そして、それを2年間しているので、曖昧だがこの学校の生徒の顔ぐらいは覚えている。

 しかし、風紀委員の仕事をしている時、この人は一度も見たことがない様な気がした。

 そんな物思いをしていると、

 「でも、この学校の図書室は本がたくさんあるよね」

 話しかけてきた。

 「そうですね。まさか転入生ですか」

 「うん、つい昨日に転入ばかり。まだクラスに馴染めていないから、とりあえず図書室に来てみただけ」

 どうりで見たことなかったわけだ。

 「なるほど。あ、3年生ですよね?」

 「うん」

 なんだろう・・・。

 なぜかこの人と会話をしていると、懐かしさを感じる。顔もなんとなく見たこと

あるような・・・。

 1度会ったことがあるような感じ。

 いや、1度ではなく古い友人に再会したような心境に立たされる。

 まさか、中学校が同じだったり。

 でも、中学のときはそこまで先輩と話す機会は部活の時ぐらいしかなかった。

 それに、俺が所属していたバレー部は先輩が極端に少なく、2、3人ぐらいしかおらず、先輩のマネージャーなんて1人もいなかった記憶がある。

 「名前、訊いても良いですか?」

 「名前? 名前は神崎綾子かんざきあやこ

 一応、名前を訊いてみたがやはり覚えがない。

 「あなたの名前は?」

 「俺は大鳥新です」

 「あらたか。良い名前だね」

 「ど、どうも」

 名前も聞いたこと無かったし、1度会ったことがあると思ったのは気のせいだろう。世界には似た顔が数人いると聞いたことあるし。

 そう思った矢先、

 

 「私はそろそろ教室に戻るね。じゃあね、


 それは今まで、たった一人にしか呼ばれたことがないあだ名だった。

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