第二巻 第十七話

第十七話


穆炎:「彼女はだれだと思っている?彼女はだれに似ていると思う?」穆炎は雲知の目をじっと見つめて、こっそり探ろうとした。

今回、雲知はあっけにとられた。彼女は、それは自分だと話したかった。彼女は夢の中で見た、穆炎が教えた相撲、水切り、兵営、戦場、草原のことを話したかった。しかし、話が喉から出かかったところ、躊躇って答える勇気がなかった。

穆炎:「恒诺雲、あなた自身だ。」穆炎はため息をついた。

雲知:「漢の時代?それはわたしの前世?だから、わたしが夢で見たのは、果たして本当のことだろうか?!!」

穆炎は頷いた。

雲知:「あの日、蓬莱公園の中で、わたしの手を引いて水切りをしたのはあなた??あなたは身を隠すことができる?」

穆炎:「はい。そうです。」そう言いながら、穆炎は頭をさげ目を閉じて、身を隠した。

穆炎が再び現れた時、もっと近づいて、雲知の目の前に立っていた。「あら。あなたのせいで、住民団地のところで、このように法力を施した。これはよくないよ。」とは言いながら、穆炎は明るい笑顔を見せた。明らかに、先ほどの軽率にはすこしも不安を感じなかったようだ。

穆炎:「知っているか、あなたが公園に水切りしに行ったのを見て、本当に驚いた。あなたが最初に思い出したことは、まさか水切りだとは思わなかった!」穆炎は雲知の反応を完全に無視して、くどくど言い続けた。

雲知:「ええ。。。わたしは、あなたが字が読めないという夢を見た。。」雲知は舌を出した。

穆炎:「はい。あの一枚の羊皮をまだ覚えているのか?」こう言いながら、穆炎は頭をさげ呪文を唱えた。そうすると、一枚の羊皮は雲知のカバンの中から徐々に漂い出し、二人の目の前に来た。

穆炎:「これは、あなたがわたしに教えた一首目の詩。」

「絹のような小雨がちらちらと舞ううちに、青空が段々暗くなった。

西域からの風がのれんを巻き上げ、君と半生を過ごしてきた。

山並みが千キロと延々に続き、君の手を取り笑いながら山河を見ているいうち、

また一日が過ぎた。」


雲知:「呉国が兵を起こし、敗れた。その後のこと、まだ覚えているのか?」雲知はゆっくり頭をあげ、穆炎を眺めた。夢の中の情景は目の前に浮かんできた。

匈奴の域内、穆炎の家のテント前

空気が震え、だらしないおじさんは馬を引いて、ゆっくりと歩いてきた。空を一つの鷹が飛んでいたところ、一羽の羽がふわふわと馬の背中に落ちてきた。そうすると、プ―という音をして、穆炎の肉体に代わり、馬の背中に倒れた。

诺雲:「穆炎!!」诺雲はテントののれんをめくって出て、馬の背中にいる穆炎を見ると、大変なことになったと分かったので、すぐ駆けて行った。

诺雲:「穆炎はどうしたの!!?」

だらしないおじさん:「狼の群れに襲われたので、もう。。。」だらしないおじさんはこれ以上言わず、穆炎の頭を覆っている布をめくった。血だらけだった。

恒诺雲は目を丸くして、目を疑うほど信じられなかった。穆炎と一緒に草原の中で生活する日々は、草原にいる人々と動物と付き合ってきた中で、穆炎が見せた腕は、毎日、诺雲は再認識することができた。彼女は、穆炎が狼に襲われ死んだことを信じないというより、むしろ穆炎が絶対に人間の世界では死なないと信じると言ったほうがいい。

诺雲:「あなた様は、いったいどういう人?」诺雲は振り返ってだらしないおじさんの目を眺めた。だらしないおじさんはしばらく黙った。恒诺雲は明らかにとっくに穆炎が人間じゃないことがわかったらしい。

だらしいおじさん:「南京土地、劉徳福。」だらしないおじさんは、初めて一人の人間に対して自分の名前を言いだした。

诺雲は目を丸くして、深呼吸した。「彼はどうしたの?」穆炎の肉体は急に消え、一羽の羽に変わった。

だらしないおじさん:「彼は蔡允を救うために、元の形に戻され、山に戻り休養した。」

诺雲:「元の形?」诺雲はしばらくぼうっとしていた。「彼は妖怪?じゃ彼は。。。」

だらしないおじさん:「あなたは一生、彼に会えないかもしれない」诺雲が声を出さず涙を流したのを見て、だらしないおじさんは、嘆いた。「一生、あなたの面倒を見てほしいと穆炎に頼まれたので、今日はあなたを南京に連れていくつもりだ。あそこにまだ蔡允がいるから。」

诺雲は涙を流しながら頭をあげた。「離れる前に、やりたいことがある。」

だらしないおじさん:「なに?」

诺雲:「ここはわたしと穆炎が十年生活したことがある所だから、ひとつ記念を残したい。彼とわたしがここに生活したことがあるのを記念したい。」こう言い終わると、彼女は懐から一枚の羊皮を取りだした。

だらしないおじさんは、にっこりと笑って頷いた。


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