第十九話 恒裕杭の死亡

第十九話


遠山中学校高二3組の中国語授業の中で、先生が西漢の詩を朗読していた。


先生:「西南方向に向かって飛んでいる鳥がいる。光り輝いて鷹のようだ。朝、空の北側から出発し、夕暮れには、既に南の山陵にはその鳴き声が聞こえている。一言を伝えようとしたら、鳥に絵が描かれている手紙を託せばよい。」


雲燦は講義台の下で、こっくりこっくりと寝ており、手を頬に支えぶつぶつ言った。「西南方向に向かって飛んでいる鳥がいる。光り輝いて鷹のようだ。。。」まだ次を読みおわらないうちに、もう意識を失って、魂が雲の上まで飛んで行った。


雲燦の目の前に霧が舞っていた。雲燦の夢:


西漢


恒裕杭は回廊を通して書斎に向かってすたすたと歩いていた。途中でお供に「射て落ちた鷹の足には、縛られているとのこと?」と聞いた。


お供は「はい。全巻の羊皮の上にはすべて匈奴の言葉が書かれています。」と答えた。

恒裕杭は眉をしかめぶつぶつ言った。「この時、呉王様が匈奴と癒着する可能性がないでもないのだ。ただし、今回おそらく呉王様当ての手紙じゃないかもしれない。」


ここまで考えると、恒裕杭は歩調を速めた。東庭に足を踏み入れた時、お供は立ち停まり、恒裕杭一人だけ庭に入った。将軍宅の中は、書斎は兵営要地のようで、一般のお供も入ってはいけないということだ。


この時、空は暗くなりつつある。書斎の中はこうこうと明かりがついて、ガーデンまで照らされていた。恒裕杭はそばのドアから入ろうとしたら、ふと屋上に何かぴかぴか光っていて、見上げると、なんと屋上には一人が伏せていた。先ほど光ったのは、遠くからみると、なんと腕を守るための鎧とは!それは兵営の人こそ、あるものだ。


恒裕杭:「まさか、兵営の中のスパイか!!?」恒裕杭は気付かないように注意深く近づいてきて、一気に庭の中に飛び込み、そして大きな木の後ろに隠れ、暗さの中で、静かに様子見をしていた。


時間がどれほど経ったかわからないが、夜は更けていったが、そいつは屋上にはびくともしなかった。恒裕杭はいらいらしていたところ、外から一人の兵士があたふたと書斎に駆けてきた。「ご報告します!先ほど南城門の所で、城門を出ようとする人を捉えました。こいつは刀を持っています。既に縛られて、前の庭に送られた。」


恒裕杭はこれを聞くと、何も言わず、出ていった。屋上にいる蔡允は手をつける隙間がなく、嘆いていたが、このチャンスを見ると、「まあ、いいや!もう穆炎を待たない!」と思って、音を出さず地面に飛び降りた。こそこそと壁に沿って、そばのドアに近づき、暖簾を捲って中に入った。


恒裕杭は「よし。ようやく下りてきた。」とため息をついた。それから、十数メートルを離れてこそこそ蔡允の後ろについてきて、中に入った。


蔡允ははやく羊皮を手に入れようと思うばかりなので、だれか後ろについてくるのに気付いてなかった。この東庭の書斎には、誰でも簡単に入れるわけではないし、またこんな時なので、蔡允はだれかが既に自分の後ろについて、部屋の中に入ったとは思わなかった。


蔡允は書斎に何回も将軍に会いに来たので、部屋中のレイアウトにはとても詳しかった。彼ははやく机に向かって歩いた。案の定、羊皮はその机の上に置かれている。めくってみると、確かに先日穆炎が彼に見せた匈奴の言葉だ。穆炎は大変うれしくなり、慌ててそれを懐に入れた。


後ろにいる恒裕杭はすべてをはっきり見た。「もし呉王様の人だったら、こんなにこそこそする必要はない。本当にそのスパイか!この場で捕まえよう!」と心の中で思った。もう躊躇わず、彼は、左手で蔡允の左腕に攻撃をかけ、その腕を背中のほうに回すと同時に、右手で蔡允のネックを力一杯で締めようとした。


蔡允はまったく無防備で、しっかり締めつけられたので、慌てて猛烈に抵抗しようとしたが、恒裕杭には中々かてなかった。


恒裕杭は将軍の子供で、小さい頃から様々な兵器を使いこなせるだけでなく、身近な格闘が得意なので、呉国の中で腕が一流とされていた。


蔡允は豚の肝のような色が顔に現れ、半分死にそうなところに、目の前に、幼い頃、穆炎が教えた匈奴相撲術がふと浮かんできた。それで、一生懸命、身を下に沈め、膝を曲げ、恒裕杭を体を曲げた部位に導いた。それから、一方側の膝で地面につかせ、足を伸ばし逆に恒裕杭のすねにひっかけて、両手で先方の腰を抱え、手足を体の前に移動させるようにした。恒裕杭はすぐ、バランスを失って、体が前に傾いてしまった。


蔡允:「今の時しかない!わたしの命はこれに関わるのだ!」彼は、最後のすべての力を使って、逆手で恒裕杭をしっかり抱えながら、空で前へ引っくり返した。恒裕杭は足元がふらついて、蔡允に背負われ、一緒に前へ引っくり返され、ドンと地面に落ちた。


この転びで、蔡允は恒裕杭を体の下に押さて、空に引っくり返す一瞬、腕を守るための鎧の中から、刀を抜きだし、先方の背中に刺し込もうとした。二人がドンと地面に落ちるとともに、刀は恒裕杭の体の中に刺し込まれた。


恒裕杭は口から、血が噴出され、目を丸くして、自分がこんな始末か信じられないほどだ。

蔡允は恒裕杭の腕を緩め、ゆっくり立ち上がり振り向いた。死にそうになる恒裕杭は目を丸くして、

目の前の人が振り向いたのを見ていた。蔡允が振り向いた瞬間、二人とも目の前の場面にショックを受けた!恒裕杭は「蔡允!!。。。。」と口がすべてしまった。


蔡允はどうしたらいいか分からず、地面にいる恒裕杭を見ていた。「わたしはなんと彼を殺した!恒诺雲のお兄ちゃんを!」


この時の紹興東湖で、穆炎は湖に面し酒を飲んでいた。

穆炎:「これから、あなたがそばにいてほしく、一緒に星、月を見て、空と大地がとともに存在することを見たいと思うだけ。これから、あなたの楽しさ、悲しみが分かり、あなたの心が分かりたいと思うだけ。これから、あなたにわたしの存在を知り、わたしの迷いが分かってほしいと思うだけ。」

穆炎は落ち込んだ熊のように、涙ぼろぼろだ。


この時、南京夫子寺 穆炎の家の地下室


千守は趙永安の説明を聞いた後、「雲知は、わたしと穆炎にとって一つの試練?なぜ!?」と思わず聞いた。


趙永安:「このことを話すと、時間がかかる。まず。。」趙永安は手を額に当て目を閉じて、それからしばらく考え込んだ後、「知っていると思うが、神様としては、天機を漏らすべからず。ただし、いまは一つの方法がある。李雲燦がいま、考えているのは、正にあなたが見る必要があるもの。速く行きなさい。。。。」

千守は一瞬ぼうっとしていたが、何も言わず地下室から消えてしまった。




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