第三話  南京の土地

第三話  南京の土地


病院の正門に泊まっている学校バスがクラクションを鳴らした。李雲知は行かなければならない。お母さんは李雲知を病院の正門まで送った。李雲知は学校の定期バスに乗って、バスが動き出し、上海に向かった。


病院の正門のこちら側には、お母さんと千守、穆炎、人、鬼、妖怪が一列に並び、一緒に学校の定期バスが遠ざかっていくのを見送った。


穆炎の深い金色の目玉は、日差しの中で、輝いている。彼自身ですら、雲知の後ろ姿をこんなに夢中に眺めているのにも気付いていないかもしれない。

李雲知を乗せた学校バスが病院の正門を出て、姿が見えなくなるまで見送った後でも、蔡千守は

まだ正門の石階段の上にぼうっと立っていた。その目つきが憂鬱で、深かった。


千守:「穆炎、わたしがはやく戻れる方法を見つけなくちゃ。」


穆炎は、頭を下げ考え込んだ。「主人、南京市の土地を管轄しているのは、妖怪には優しいいい神様だ。わたしが危ない時に、お世話になったことがある。いま、穆炎はこのような出来事を犯した。おそらく先にあの方に聞いたほうがいい。彼はきっと助けてくれるから。」


千守:「土地?この世には一番近い、九品胡麻官?じゃ、急いで行きましょう!」

 (注釈:九品胡麻官とは、ごまのように小さいことから、官位が一番下の官位と喩えられている)


穆炎:「はい。福徳宮はここから遠くない。」

穆炎は行こうとしたら、急に千守に止められた。

「ちょっと待って。あなたはこれから、わたしを主人、主人と呼ばないで。聞いて、気持が悪いから。あなたが我が蔡家族を千年守ってきているから、わたしこそあなたを尊敬の呼び方で呼ぶべき。これから、あなたはわたしを呼び捨てましょう。わたしを千守と呼んでもいい。」


穆炎は黙り込んで千守を眺めた。彼の真っ黒な目が輝いて、熱かった。彼は思わず笑った。

「はい。穆炎はわかった。」と言って、道を案内しようとしたら、また何かを思い出して、振り返って、「わたしにも一つある。」と言った。


千守:「え?なに?」



穆炎:「この前、あなたと一緒に、歩いたり、乗車したり、地下鉄に乗ったりしたことは、普通の人が外出する時、使う交通手段とあまり変わらない。法力はない。それは、あなたが初めてここに来たから、道を知っていない。これから、どこに行こうが、大体の方向をちゃんと覚えてください。目標方向がわかれば、わたしたちは心の中の思いで、テレポーテーションできる。歩いたり、車に乗ったりするなど時間を無駄にする必要もない。」


千守:「テレポーテーション?」


穆炎:「はい。残念ながら、こちらは上海ではないから、あなたは方向感がまったくない。そうじゃないと、あなたに教え、やってもらうことができる。」


千守:「わ!こんなにすごい!?」


穆炎:「勿論。仙人妖怪などは歩いて行ったり来たりしていると思ったのか?」


千守は頭を掻きながらにこにこ笑った。


穆炎:「だから、いまから行くところはちゃんと覚えてね。おそらく今後福徳宮に行くチャンスは少なくないから、二回目歩きたくないと思うのよ。。。」


千守:「わかった!ご安心ください。わたしは結構、道を覚えているから。」



南京の地下鉄の中


穆炎と千守が肩を並べて立っていた。穆炎はこのチャンスを利用して、空で半分透明な地図を描いて、いまのランドマーク及びこれから行く目標方向について千守にくどくど説明していた。千守が

いらいらしているが、穆炎に見くびってほしくないので、しぶしぶしながら真面目に頭をあげて見るしかなかった。この時、車両の内部にいるすべての人類は、勿論、だれでも彼達が見えない。あの、穆炎が描いた半分透明な地図も。


南京福徳宮


生まれてから、初めて人類のやり方で福徳宮まで歩いた穆炎は、くたびれてしまった。門に踏み入れるとたんに、「土地お爺さん!土地お爺さん!夫子寺の蛇が参りました。」とせかせか叫んだ。

しばらく経って、穆炎の声が寺の中にこだましたが、返事は返ってこなかった。

「まさか、サッカーの試合でも見に行ったか?」穆炎は囁いていた。


千守:「なに!!?土地お爺さんもサッカーの試合も見るの??」千守の表情は誇張だった。


穆炎:「ええ、そうだよ。。この数日間は欧州選手権だ。知らない?」


千守:「ええ。知っている!だけど。」千守が頭を縦に振りながら答えた。

「土地お爺さんもサッカー試合を見るなんて、想像できないのよ!このような娯楽は人間の世界であるべきじゃない?彼はどのチームのファン?」


穆炎:「これは。。。。。この人間の世界に一番近い土地だから、これほどたくさんのことを知っている。これは人間の世界に駐在する大使館みたいな職務さ。当然、郷に入れれば郷に従え。人間の世界での活動なんかに参加しても全然おかしくないと思う。彼は真面目な研究者でもと思ったのか?」


千守:「。。。なるほど。。。わかった。」千守がこのたとえを受け入れられると思った。

「彼が見に行くなら、現場に行く?」


穆炎:「彼はこの辺の土地を管轄しているから、遠くまで行けないと思う。。。試合の上空をちょうど通りかかった神様に知られたら、首にされ取り調べられる!」


千守:「あら。。。なるほど。それじゃ、どこに行って彼を捜すの?」


穆炎:「ええと、ちょっと考えさせてください」穆炎は囁いて、ふと思い出した。

「土地お爺さんは賑やかさが好きだから、おそらくバーの街に行ってサッカーファンと一緒に試合を見に行った!」


千守は白目を剥いた。。。「Oh。。。バーの街!!?」


バーの街 街角にある青台山ビールクラブ  昼間


靑台ビールクラブに近づくと、フランス窓には小さいテーブルにもカウンターにもユニフォームを着たファンで一杯になり、カウンターのスクリーンを見て、「頑張れ」と叫でいた。角隅にビーチサンダルをはき、目立ったビーチパンツとTシャツを着ているだらしないおじさんがいた。彼は空に横になって、ビールを飲みながらサッカーの試合を見ていた。南京の土地お爺さんに間違いない。周辺の人たちは一人も空のおじさんの存在には気づいていなかった。


千守は思わず呆気にとられた。「この方はもしかして、土地のお爺さん?!」千守が空に指差して、

あいた口が塞がらないまま振り返って穆炎を見ていた。


穆炎は笑った。「この世界はずいぶん変化した。すべての神様は古い時代のままの様子を保っているわけではない。」

二人は一緒に青台山ビールクラブに入った。


その土地のところについたら、穆炎は見上げて「土地お爺さん、土地お爺さん」と叫んだが、周りにはサッカー試合の生放送、ファンの乾杯、エール、ギャンブルの声など、混ざり合い、頭上の土地お爺さんはいうまでもなく、傍にいた千守でさえ聞こえなかった。やむを得ず、穆炎は手を振って、プ―とおじさんのビールコップをぶち倒した。


おじさんは見下ろして、「あれあれ、だれかと思ったら、蛇だ!今日は、なぜ人間の姿に変身したか?ところでこの姿はわたしが好きなタイプ!」


穆炎:「ハハハ誉めていただき、ありがとうございます。」穆炎は軽く首を縦に振った。


おじさんの視線はまた、千守の身に移った。「え?」


穆炎:「以前話した蔡家族。。。。まだ覚えているか?」穆炎はおじさんが聞いてくるのを待たず、先に紹介した。


南京土地:「ええ、覚えている。どうしたの?」


穆炎:「こちらは。。。蔡家族の子孫。」


南京土地:「この方?しかし彼はどうも。。。。」おじさんは頭を下げ眉をしかめて千守をじろじろ見ていたが、益々納得がいかなくなった。それで、ふとたちあがり飛び降りた。土地おじさんは穆炎を一周して、「こいつは、鬼のようだが、また鬼ではないようだ。体中はまだひと息が足りない!これはどういうことだ?!」と聞いた。


「。。。。。。」千守と穆炎二人は顔を見合わせ、どこから話せばよいか分からなかった。


南京土地:「彼の名前はもう出てきたか?」


穆炎:「はい。」


南京土地:「閻魔のところに行った?」


穆炎:「まだだけど。。。」穆炎はちょっと躊躇したが、やはり真相を話したほうがよいと思った。

「わたしの腹の中にいる。」

南京土地:「あなたの腹の中?」おじさんはまったく理解できない。そうすると、おじさんは目を閉じて、穆炎の脳の中から当時の場面を読み取ろうとした。名前が千守の体から漂ってきて、穆炎が蛇の形で空に飛んで名前を飲み込んだのを見た時、思わず驚いた。


南京土地:「それで名前があなたの腹の中にある!!?」おじさんは遠くまで飛んでいった。

「それじゃ。。。。その肉体は?」


穆炎:「わたしの800年の精華が彼の肉体にある。。。支えてある。」


南京土地:「。。。。。。」おじさんはそこに佇んで、しばらく落ち着くことができなかった。

「違う。もし死ぬべき人だったら、納得がいかないね。。。閻魔はお前たちが思うままにわたしのところに来させるものか?!」


おじさんは、歩き回ったが、突然止めた。「彼は死ぬべきではないじゃない??」


千守:「そうだよ。彼のせいだ!」千守が困った顔ぶり大声で報告した。「彼は他の人をわたしに見間違え、他の人を救ってわたしを河の中に倒した。」


南京土地:「え?」おじさんはまだわからなかった。「河の中?」


穆炎:「彼は多くの人と秦淮河に落ちたが、ちょうとわたしが通りかかった。それで、一人が彼蔡家族のペンダントを手に握ったので、わたしは。。。当然、救いに行った。あなたも知っていると思うが、わたしがここで長く待っているのは、蔡家族の子孫を待って、守りたいからだ。。。ねえ。」


南京土地:「ええ、おっしゃった通りだ。知っているけど、だからなに?彼の死と何か関わりがあるか?」


穆炎:「わたし。。。。尻尾で。。。。ちょっと振っただけだけど。。。その人は助かったが、千守がちょうどその人の傍にいた。。。」


南京土地:「それで?だから?」


穆炎:「千守はわたしの尻尾が振られた水の流れで。。。。。。河の底に沈められた。」

穆炎が言い終わり、再び悲しくなった。


南京土地:「おまえ、馬鹿な蛇と言うが、本当に馬鹿な蛇だ!!」おじさんは穆炎の頭の後ろをたたき、「おまえは蔡の人を救うために、他の人の死活はもうどうでもいいのか。。。かえって蔡家族の人を殺してしまった。ざまをみろ。」とおじさんは憤った。


穆炎:「わたしは間違っている。。。。だけど、なんとか彼を救ってください。」


南京土地:「彼を救う?彼は死ぬべきではないじゃない?」


穆炎:「理論上そうだが。」


南京土地:「まさか実際死んだか?!。。。。あなたの800年の精華がどういう役割か?」


穆炎:「彼の肉体を支えているよ。彼の魂はいま、あなたの目の前にいるこの方。。。。しかし、戻れないのよ。」


南京土地:「戻れない?」おじさんは思わず眉をつり上げた。


千守:「ええ。もうやってみた。わたしは自分の肉体の中に入れ込めない。」千守がなにか悪いことをした子供のように、目つきが迷ったようだった。


南京土地:「はい。それでいい。それはなぜわたしが彼を見たとたんに、鬼のようだが、また鬼ではないような感覚を持っている原因。体中はまだひと息が足りないからなあ。」


「ひと息?」千守と穆炎は思わず口を揃えて聞いた。


南京土地:「そうだ。彼の最後の魂。。。がまだ肉体から出ていない時。」

おじさんは穆炎に向かって、彼の鼻先に指差して、「おまえはいいことをしたね。彼の体から出てきた名前を飲み込んで、それから800年の精華をいれて鎮めた。そうすると、彼の最後の魂が中に封印されてしまった!」


「ええ!??。。。」二人とも驚いた。しばらく理解できなかった。


千守:「だけど、ひと息が足りないとしても、いま、わたしが自分の体に戻ろうとするが、なぜどうしてもできないのか?」


南京土地:「それは、その肉体の魂があなたを彼と思えないから、当然拒否したいわけだ。」


千守と穆炎:「なに!!?」


おじさんは二人の愚かな様子を見て、思わずにっこりと笑った。

「あなたたちは七魂六魄という言葉を聞いたことがあるか?」

千守と穆炎は頷いた。


南京土地:「七魂六魄は人のたましいを主宰している。すべてのたましいは人類の心の深いところには、違うレベルでの記憶を持っている。死亡が近づき、魂が肉体と分かれ漂ってきた時、一番深いところにある記憶は最後に出てくる。」おじさんはふたりをちらっと見て、言い続けた。

「あなたたちが今回、ぶつかった問題は、神様が解決できる問題ではない。彼は元々死ぬべきではないからだ。閻魔の管轄範囲に入っていない。彼は完全に死んでいないが、たましいが完全ではなく、離れ離れになった。これも神様が解決できる問題ではない。これに関する規則ルールがないから。」


千守と穆炎は目を大きくしておじさんを眺めた。「規則ルール?」


南京土地:「ええ。。。しかも解決できる魔法がない。」おじさんは急いで答えた。


穆炎:「それじゃ、だれが解決できる?まさか妖術?」穆炎は急に緊張してきた。


南京土地:「NO。。。no,no…」おじさんは得意になり、手を振って、3本のビールを出して、その内の2本を穆炎、千守の前に移した。


「なぜ彼達が見えないか?」千守がビールを見て、また緊張しそうに周辺をみた。


南京土地:「結界があるからだ。わたしは、わたしたちの外に、ひとつのカバーを作った。彼達が見えない。飲みましょう。いい味がします。」


「はい。」千守りが手を伸ばして取ろうとした。


穆炎はそばで目を閉じて、まさかと信じられない顔だった。


穆炎:「ちょっと待て!あなたは、自分が戻れるかどうかに関心がないか?」穆炎が千守を眺めた。


千守:「関心があるよ!!?だけど、おじさんは焦らないのに、あなたはなにを焦っているか?」

千守が言いながら、ぱちんとビールを開け、一口飲んだ。


千守:「ええ。。。こんな味なのか。初めて飲んだ!死んだあとだけど。」千守がちょっと感動したようだ。


穆炎:「土地お爺さんと呼んで!。。。」穆炎は悲しくなりどうすることもできなかったので、ため息をついて手を伸ばしビールを開けようとした。


おじさんは、そばで笑った。「実は、この件を解決できるのは、彼自身しかいない。」


千守:「わたしか?」


穆炎:「彼か?」千守と穆炎が同時に聞いた。


南京土地は頷いて答えた。「はい。一番深い記憶はなにか彼自身が探さなければならない。この記憶を知ってまた持ってからじゃないと、その肉体の中に戻れ、一番深い魂に認可されることができない。いったんあなたが認可されたら、あなたは永遠に肉体に戻れ、再び人間の世界に戻れる。」


千守:「一番深い記憶に認可されるか?」


南京土地:「そうだ。」


穆炎:「あなたの一番深い記憶はなにか?」


千守:「わたしの一番深い記憶はなにか?」

穆炎と千守が再び口を揃えた。


南京土地:「それは、あなた自分に聞かないといけない。。。。」おじさんは妙に千守を見た。

「あなたが心の中で、一番気にしているのはなにがある?」


千守:「わたし。。。。わたしは、お父さん、お母さん、お爺さん、お婆さんを気にしている。そうだ。。おいしい肉、そうだそうだ。。まだある。。。わたしの将来の奥さん、李雲知。」千守が一つ一つ例をあげ始めた。


南京土地:「ええ。これで結構。」おじさんは励ましたように言った。「その一番深い記憶は、いま魂の中にないが、自分が好き、気にしているものはわかるはずだ。だから、やるべきことは、彼達と関係がある記憶を捜すこと。深い記憶に残る感動の瞬間と考え方だ。わかったか?」


千守:「ええ。。。。わかったようだが、ちょっと分からなかったようだ。」

千守が眉をしかめて事実を話した。


南京土地:「ええ。あなたはまだ子供だから、あれを寄せ集めるには、相当時間がかかる。」

おじさんは微笑みがなくなり、穆炎に向かって言った。「だから、あなたはまだ手柄(てがら)を立てて誤(あやま)ちをつぐなう機会はまだある。それは、彼のためにこれらの記憶を捜すことだ。あなたは人間の世界には千年もいるので、人間の世界にも詳しいと思う。すべてを寄せ集めるように、少しでも手がりを見逃さないでください。」


穆炎:「はい。わかった。」穆炎は頭を垂れていた。


南京土地:「尋ねるなか、何か問題があったら、わたしのところに来てください。わたしがどこにいるか知っている。」おじさんは瞬きした。


穆炎:「はい。」穆炎はちょっと猶予してから、いった。「実は、まだひとつ報告したいことがある。」


南京土地:「言え。」


穆炎:「彼。。。。の家は上海にある。今回、南京に来たのは、学校のピクニックのためだ。」


南京土地:「つまり、彼は殆ど上海に育てられた。」


千守と穆炎は無言のまま頷いた。


南京土地:「ハハハハ。。。」おじさんは上を向いて大笑いした。「こりゃすごいね。上海の土地は、わたしのように融通がきかないからね。なかなか手ごわい相手だ。気をつけたほうがよい。」

おじさんは、あやしい顔をしていた。


千守と穆炎は顔を見合わせた。青台山ビールクラブの正門を出て、千守と穆炎二人は、ぼんやりとバーの街を眺めた。千守は上を向いて天を見ていた。日差しがさんさんとふりそそいで、天気がとてもよかった。


千守:「わたしたちはこれから。。。。どこに行く?」


穆炎:「どこに行こうが、いま最も重要なのは、覚えなければならないことがあること。」


千守:「テレポーテーション?」


穆炎は頷いた。「わたしたちが来た時の道順と方向を、まだ覚えている?」


千守は来た時、地下鉄の中で穆炎が空で描いた地図及びマークした半分透明な紅い道順を思い出そうとした。


千守:「はい、覚えている。」千守の目つきが堅かった。


穆炎:「それじゃ、わたしに従ってやりなさい。目を閉じて、心の中で来たあの所を思ってください。ターゲットは病院の正門。覚えているか?」


千守が目を閉じて病院の正門を思い出した。「はい。覚えている。」


穆炎:「心の中で思って。。。。いまから行け。そこに立て!」穆炎は目を開け、千守を見て、「思え!」

といった。


千守が頭を下げ思いこんて、心のなかでぶつぶつ言い始めた。「病院に行け病院に行け病院に行け!」


そうすると、千守の頭の中に現れた病院の正門の画面が、急に光の速度の形で延ばされ、一本一本の線状みたいな画像に変わった。


穆炎が千守の傍で目を開け、眉をしかめ注目した。彼は頭を下げ思いこんで、非常に心配していた。

だけど、間もなく、千守の周りの空気が震え始め、数秒後姿が消えた。

穆炎の顔に喜びと安堵の微笑みを浮かべた。それから目を閉じて、瞬く間に姿が消えた。

この時、病院の正門の前には多くの人が行き来している。突然、正門の真ん中に、空気が震え、千守が現れた。彼はぼんやりと周りを眺めた。それから1秒後、穆炎も現れた。

千守がぼうっと穆炎のそばに立って、自分の考えに夢中していた。アインシュタインの空間への見方はだれでも知っているけど、肌で感じられることは、まったく別のことだ。

千守が、鬼になってから、すべて悪いことばかりではないかもしれないと考えるようになった。

一方、穆炎は傍に立って、おとなしく声も出なかった。「自分がこれを身につけた時は、反応がどうもこの時の千守よりずいぶん強かったようだ。だけど、もうすこし様子見する必要があるか。」と穆炎が心の中で思った。

さすが千守のことだ。李雲知が彼を嫌がっているのも絶対根拠のない話ではない。千守がすぐ、トライを始めた。彼は先に、病院の正門前にある池に向かって、じっと見つめて、それから目を閉じた。空気が震えた後、千守が消えた。再び現れたら、既に池の真ん中にある。


千守:「これはすごい!!」千守が池の真ん中に立って、穆炎に向かって「身につけた!!」と叫んだ。穆炎は嬉しく頷いた。この子供の反応は落ち着いている。

1時間後、千守が木の枝を見あげて、目を閉じた。そうすると、1秒後、彼は既に枝に立って、木の下に向かって「はい!穆炎!はやく見て!」と叫んだ。

この時の穆炎は、階段の上に座って手で頬を支え、白目をむいた。彼はようやく、李雲知の気持ちを理解できた。


穆炎:「おまえは猿か?」穆炎は叫んだ。「もう1時間立ったが、まだ遊びが足りないか!!おまえははやく下りてくれ!」

千守は下りたくなかった。彼は木に立って遠く眺めると、ちょうど壁の外には焼き芋を売っている露店が目に入った。それは、千守が放課後、よく食べるものだ。懐かしいなあ。鬼になってから、これをまだ食べたことがないなあ。千守がすぐ嬉しくなり、目を閉じ、消えた。そうすると、露店の前に現れた。


千守はオーナーが気付かないうちに、さっさと手を伸ばして一番小さいものを取ろうとしたが、手が芋の真ん中から通り抜けていった。

「ええ!!?」千守が驚いた。慌てて手を伸ばしてもう一度試してみた。一回、二回、千守が毛系の玉を見た猫のように、両手を使って、飛んで捕まえようとした。しかし、役立たなかった。すべてだめだった。千守が見上げて、ちょっと考えた。「違うね?南京の青台山ビールクラブにいた頃、土地おじさんはまだビールを御馳走したことがあった。その時、千守と穆炎はみな、手で取ろうとした。また、自然にビールを開けた。」

千守:「だけど、今回はなぜ!!?」


穆炎は、千守が木の上から消え、再び庭には現れなかったことを見て、驚いた。正門に向かって、走ろうとしたところ、千守が腰を抜かさんばかりに自分の前に現れた。


千守:「。。。わたしはここにあるすべてのものをつかめない。さっき、芋を食べたかったが、どうしてもつかめなかった!。。。。。。わたしの手は芋の真ん中から。。。通り抜けた。」千守が困った顔になった。


穆炎は千守の目を眺め、「あなたはもう人間ではなくなったこと、もう忘れたの?」と言って、一歩後退して、千守をじろじろ見た。「この世の中では、あなたはただの魂だけだ。」


千守:「これは、勿論知っている!だけど、さっき靑台山ではあなたも見ただろう。わたしたちもみなビールを飲んだんじゃない?!わたしたちは持っていたのよ!」千守が大声で反発した。


穆炎:「それは土地お爺さんの魔法だよ。あなたが飲んだのは錯覚だ。」


千守が呆気にとられた。


穆炎:「これは本当のことだ。神様は人間の世界のものをすべて食べちゃいけない。ましてビールのことだ。それは、彼が作り出したまぼろしに過ぎない。」


千守:「だけど、本当に飲んでおいしいと思うよ。パイナップルの味もする。。。」


穆炎:「そうか?わたしが飲んで、苦い感じがする。」


千守:「なに?苦い?」


穆炎:「そうだ。あなたを騙すもんか。それは昔、あなたの記憶がパイナップルジュースの味を感じさせるから。それは、あなたの心の中で望んでいる一つの映りに過ぎない。あなたはビールを飲んだことがある?」


千守は元々輝いていた目つきが、一瞬、暗くなった。「ない。」


穆炎:「それならいい。」穆炎はやむを得ず再度強調するしかなかった。


千守:「戻れなければ、人間世界のおいしいものを食べられなくなるか?」

千守が長く黙ってから、穆炎を眺め、「わたしは戻りたい。」と言った。

穆炎は額を撫で、目を閉じた。「芋のために、戻りたいということじゃないか?」


千守が苦笑いを浮かべた。「焼き羊肉、火鍋もある。」


穆炎:「いまは夏だよ!」穆炎は冗談のつもりで言いたかったが、千守の目には涙がこぼれそうなところを見ると、本気に戻った。「ご安心ください。わたしたちはきっと戻れる!この目で人間の世界で芋を食べられるようになるまで、助けるから!」穆炎の金色の目玉が光っていた。


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