千守の秘密:家神穆炎

張雨香

第一話 大蛇

第一話 


(背景)

蔡千守、遠山高校一年一組の学生。張国栄(注釈:張 国栄(1956年9月12日 - 2003年4月1日)はレスリー・チャンとも呼ばれ、一時代を築いた香港出身でカナダ国籍の映画俳優・歌手。愛称は「哥哥(お兄さん)」。)のような優雅な風貌を持っていないが、サッカー、バスケットボール、バレーボール、太鼓打ちが得意。また、毎朝、国旗を掲げる責務を果たしている。一人の高校生にとって、これは正にとても女の子に好かれる華やかな生活だ。高一に昇級して間もなくだが、既に外では有名人になり、ほぼ完全に同期のすべての女の子のハートをつかんだ。ほぼといったのは、その中に千守を非常に無視している女の子がいるからだ。それは、幼い頃から千守の傍にいた千守のことめちゃくちゃ嫌いな李雲知。いわゆる千守の幼馴染といえる。いいえ、違う。これはもしかするとただ千守の一方的な思いかもしれない。勿論、割れパンツ(注釈:幼児用の股の開いたズボン.しり割れズボン.幼児が用便しやすいように,しゃがむとしりが出るようになっている)をはいたその日から、その女の子が千守の家の下の階に住んでいるという客観的な事実がある。彼らは産着を着たまだ話せなかった赤ちゃんの頃、既に年長者に抱かれ、お互いを見たことがある。だが、遺憾なことに、この関係により彼らの付き合いは悪夢になってしまった。千守は三日間、厄介事をしでかさないと、居ても立っても居られないおっちょこちょいな人。これがゆえに、李雲知が千守の己の本分を守れない成長の中で欠かせない面倒をかける相手となった。李雲知はこれに対して、骨に染みほど怨んでいる。また、疲れきっている。ちょっと大きくなると、蔡千守がとっくに忘れていた過去やったいたずらでも、李雲知はしっかり覚えており、千守のことを常に警戒している。また、大人になったら千守に容赦なく報復を加えたいと心の中で思うばかりだ。この点では千守が結構傷ついている。千守の世界では、幼稚園時代から、姉妹及びすべての女の子からの愛を異常に感じている。だから、朝出かけてから放課後家に戻った後、李雲知から一日7回、8回白い目で見られるのは、千守にとって、まるで刺が喉に引っかかったようなことだ。李雲知に自分への見方を改めてもらい、他の女の子のように自分に感服してもらおうと千守が心の中で常にひそかに思っていた。また、その日が必ず来るとも思った。


千守の自信が盲目的だと思えば、それは大きな間違いだ。レベルの低い神様でもわかることだ。

一般の人には、桃の花があまり降りかかっていないのに対して、千守の傍には名も知らずの神様がまるで桃の木を植えてくれたかのように、桃の花がどんどん降りかかってきている。

(注釈:桃の花は春の象徴だけではなく、愛情の象徴でもある。桃花運は、よく異性関係の運、愛情運のたとえとして使われることが多い。桃花運があるという言葉は、男性か女性にもてるという意味。)

蔡千守はこのような春風に吹かれながら、楽しくすくすくと成長している。

16年目106日の時、ある不思議なことが起きた。すべてが変わってしまった。


1996年4月18日  蔡千守の家 朝

「蔡千守、はやく起きなさい!」お母さんが台所で叫んだ。

この日は、学校の春のピクニックの日。布団に居籠った千守はぼんやりとしながら寝返りを打ってぶつぶつ言った後、ようやく今日はどんな日かふと思い出した。それで、すぐベッドから飛び上がり、スプリングのようにあたふたと台所に駆けつけ、慌てて歯を磨き、顔を洗い始めた。

(この年、学校は南京へ春のピクニックを組織した。蔡千守は数カ月前からこのことを思っていた。

蔡家族の祖先は、元々南京で綿布からスタートした商人、その後、いくつかの王朝時代を経てきた。盛んであった時期に、下にある布、米、食糧、宝石の店は全国各地に分布し、地元では富豪と称されることとなった。このような家族の名誉に関する話は、蔡千守が小さい頃からおばあさんに耳にたこができるほど聞かされた。だが、いま戦争のダメージを大きく受けた蔡家族はもはや従来の輝かしさが戻れなくなり、一家3人が上海旧団地の景栄路地にある普通の旧式マンションに住んでいる。大上海ではゆとりのある生活の道で努力しようとする普通の家庭だ。

しかし、今回家族から千回、万回聞かされた南京に行くと思うと、云うまでもなく千守は心の中で、興奮していた。好運に恵まれた祖先のところに拝礼するからではなく、蔡家族の間では特別な古い伝説があるからだ。蔡家族の古い住宅の仏間に歴代に供えられているのは仏様だけではない。一匹の白く大きな大蛇も供えられている。伝説によると、蔡家族の米倉庫に育てられたこの白く大きな大蛇は、蔡家族が一家あげて金陵に引っ越して以来、一緒についてきた。今後数百年の間、蔡家族が危難に遭遇した場合、この大蛇が現れ蔡家族を助けた。それがゆえに、家の仏間の中に、十数メートル高さの白く大きな大蛇石彫刻が供えられているわけだ。毎日、線香や参拝が続いている。


お母さん:「揚げた茄子、ソーセージ、パンもカバンに入れたよ。」お母さんは叫びながら、あずき、黒大豆を入れた蓮子おかゆを慌ただしく持ってきて、1匙を汲み、千守の前に「あー」と言って、口を開けてと示していた。

この時、千守は着替えで忙しくなり、それに対応する時間もなく、頭を振ってNOと叫ぼうとしたが、お母さんからのスプーンが目の前に運ばれたので、無理やり大きな口を開け、一匙を丸飲みにしてしまった。

てきぱきと服装をきちんと整えた千守は、時計を見たら、「しまった!間に合わないぞ!行ってきます!」と驚いて叫び、カバンを背負って正門にあたふたと駆けていった。

お母さん:「畜生!ちょっと待って、帰ってくれ!お母さんが誕生日プレゼントをあげるから」

千守はすぐ足をとめ振り返ってみると、お母さんは手の中に新緑色の翡翠アクセサリを持ち、笑いながら振っている。遠くから翡翠アクセサリを見ると、それは吉祥雲の上をぐるぐる回る大蛇。生き生きして、しっとりした透明したもの。

お母さん:「これは元々お婆さんがお父さんに伝来したもの、家族の家伝の宝物よ!千守が大きくなったので、今日から渡します。大切にしなさいよ。」お母さんは満面の愛を隠せず、千守につけてあげた。

千守は感動の気持ちがいっぱいになり、おとなしく頭を近づけた。つけられた後、我慢できず手で触ってみた。

お母さん:「いいから、はやく行きなさい!間に合わないよ。。。」お母さんは千守の頭をなでながら、催促した。

千守:「はい!いってきます!」千守は飛びながら正門に向かった。外は麗らかな日差しが、彼の髪と顔を照らしている。暖かい。本当にいい日だよね!千守は興奮に振り返ってお母さんに手を振って、「さようなら!」と言った。


お母さんは千守が遠ざかっていくのを見守った。幸せで満足そうだった。この日がは千守の一生を左右する1日だとはだれも思いつかなかった。


学校のバス  昼間


学校のバスはようやく南京市の南文徳橋に辿り着いた。すぐ手前には夫子寺がある。

狄子裴:「ええと、千守!首に新しくかかっているのはなに?はやく見せてくれ!」前に座っている狄子裴は振り返って千守の傍の仲間のおやつを奪おうとしたら、千守の首にかかった翡翠が目に入り、手を止めた。「これは、もしかすると、今日のお誕生日のプレゼントか?はやく見せてくれよ!」と笑いながら近寄ってきた。

(狄子裴は小さい頃から金魚の糞のように、千守についてきているので、千守の何かちょっとしたことでも、もちろん彼の目から逃れることができない。)

千守は得意気になり、急いで翡翠大蛇ベンダントを取って狄子裴に見せた。

千守:「これは我が家の祖先から伝えられた宝物だよ。今日出かける前に、お母さんが自らつけてくれたの。一匹の大蛇だ。きれいだろう!?」

狄子裴:「わあ!きれい!とてもきれいだ!お守りか?」

千守:「ええ、そうだよね?祖先から伝えられた宝物といったじゃないか。きっと私のことを守ってくれる!」千守は得意気な顔だった。

狄子裴:「わあ。それは本物に違いない。きっと高いだろう!」

千守:「それは勿論。」千守も遠慮しなかった。

狄子裴:「これを日差しにあててみると、翡翠の模様がはっきりみえると聞いている。本当にいいものかどうかがわかる。それを外してくれないか。私が日差しにあてて見るから。」

千守:「めちゃくちゃなことを言わないで。そんなことはできないに決まっている。これは我が家の祖先から伝えられた宝物だよ。私でもつけられて一日も経たないのに、おまえにはあげられるものか。」

狄子裴:「ちょっと見るだけだから。ちょっと見てから返すから。」と狄子裴が媚びた顔だった。

蔡千守は振り返って相手にしなかった。

狄子裴:(狄子裴は本当に自分の目で自分の考え方を裏付けしたいので、益々しつこくなってきた。)

「ねえ、今日は、ピザハットのピザを持ってきたよ。全部あなたにあげるから。いいか?ちょっと見せてよ。」

蔡千守は感動の色を浮かべたが、相変わらず無視した。

狄子裴:「感心した。ケチ!ちょっと見るだけでもだめ。。。」と狄子裴はむっとして顔色を変えて怒りだし、背を向け二度と声が出なかった。

今回、蔡千守ははずかしくなり、「もういい。ちょっと見せるだけよ」と心の中で思った。

それで、ため息を一つついて、頭を下げて取って、狄子裴の前に渡した。

千守:「ねえ、あげる」

狄子裴は口を歪めて笑って、それから翡翠を空にあげ、一緒に見ないかと千守を呼びかけた。千守が腹立たしいやら,おかしいやら、近寄って見てみた。これは大変だ。本当に見ないとわらないのだ。

その大蛇は日差しの中で、全身が透き通って、体周辺の雲、霞は中国の絵のようにかすかな深緑が染み込んで蔓延し、なんとも言えない生き生きしたものがある。二人は思わず見惚れてしまった。

千守は何かを言おうとしたところ、突然バス全体が何かにぶつかったようで、衝撃が走った。子供たちは甲高い声で叫んだ。バスが傾きながら橋の欄干にぶつかり、直接河に墜落した。これはあまりにも突然なことで、バスの中の子供たちはバスが河に墜落するのを見ているだけでどうしようもなかった。この時、バスの窓は殆ど開けたままの状態で、河に落ちた瞬間、周辺の河水が急速にバスの中に流れ込み、蔓延していた。あっという間に、子供たちが完全に河水に囲まれていた。子供は殆ど泳げないので、争ってバスの手すりをつかんで窓側に登るようにした。


一方、この時、狄子裴と蔡千守が窓側にいた。二人とも泳げないので、一時慌てた。幸いなことに、狄子裴は比較的落ち着いている。彼は、先に窓の枠をつかみ、精いっぱいの力を出して体を外に出しバスの外に泳ぎ出ようとした。バス全体が相変わらず急速に沈んでいた。狄子裴は振り返ってみると、蔡千守が窓枠をしっかりつかみ、一生懸命に息を止めようとしていたのを見て、一瞬猶予した後、戻って蔡千守の手をつかんで、車体から引っ張り出した。泳げる子供たちがとっくに車体から脱出し、まっすぐに水面に向かった。狄子裴と蔡千守ははやく車体から出ていたが、まだ水の中にいるので、二人がやたらともがくほど、沈みが速くなった。

千守は、「今日は、おしまいだ。」と心の中で思い、水面からのひかりを見上げて、絶望的だった。

しかし、どうしようもなかった。向かい側にいる同じように沈んでいる狄子裴を見て、二人はいっそもがかず、意識不明まで体が徐々に沈んでいくのに任せていた。

この時、狄子裴の手には、蔡千守の家伝のベンダントがまだ握られていた。彼は、これは蔡千守のためにちゃんと保管し、唯一諦めてはいけないものだと、潜在意識の中で思った。意識がはっきりしないかの中で、さざ波が搖れ動き始め、全身が透き通った白い大蛇が狄子裴に向かって泳いできている。

その白い巨大大蛇があっという間に狄子裴の傍にきて、彼の体を一周して、手に握られている大蛇の形の翡翠を見つめていた。そうだ。この翡翠を知っている。白い巨大大蛇が狄子裴の顔を見あげると同時に、狄子裴の顔を越し、同じようにそばに漂っている蔡千守にも気付いた。巨大大蛇が驚いて、瞬きしてから、千守の傍に泳ぎじっくり見ていた。

大蛇:「彼は似ている。。。」大蛇は荒々しく太い声で言いながら、軽く尻尾で千守を巻いた。一方、狄子裴は玉のベンダントを握って引き続き沈んでいる。大蛇は狄子裴を見て、また懐にある千守を見て、思わず迷った。。。


河の岸辺  昼間

岸辺では人ごみがひどい。救急車、パトカー及び汲み上げカ―は一緒に駆けてきた。両岸辺の周辺には救われた子供たちが寝ている。狄子裴と蔡千守二人が肩を並べて寝ている。狄子裴の手には、相変わらずあの翡翠大蛇ネックレスをしっかり握られていた。ある救援者が蔡千守と狄子裴の傍に来て、どっちを先に救おうかと頭を下げて迷ったら、狄子裴は急に猛烈にせきをし、多くの水を吐きだし、苦しそうに目を開けた。


救援者が急いで頭をあげ対岸に向かって「担架!こちらにはまだ一人が生きている!!」と大声で叫んだ。それから、救援者が彼の顔を叩き、「大丈夫か」と聞いた。狄子裴はうなずいた。


救援者がすぐ中側に寝ている蔡千守のところに駆けつけて、彼の首の動脈を触ったが、脈がなかった。それで、両手を交えて、蔡千守の胸骨の下の三分の一のところを、力いっぱい押した。1分間、2分間、3分間と諦めず押し続けた。また人工呼吸も加えられた。長く経ったが、反応がなかった。蔡千守がこのようにして死亡と言い渡された。

いま、忙しい人ごみの上空に、さっき河で現れた白い巨大大蛇が近くに身を隠し、狄子裴が医者と看護婦に担架で担がれているのをじっと見ていた。

また蔡千守を振り返って見ると、この時、蔡千守の体から一つ透明な名前が出て、空に向かってゆっくりと上昇していた。その名前は、人類が死亡後、あの世に報告に行くと同時に、この人に関する前世、今世、来世が永遠に消えることの印。遠くから見ると、それは正に“蔡千守”という三つの漢字だ。

大蛇:「蔡千守!?彼こそ蔡千守!!?」と大蛇がびっくり仰天した。慌てて空に飛んで再びその名前を見ると、間違いない、確かに“蔡千守”だ。大蛇は「しまった!」と思った。再び頭をさげて蔡千守りの肉体を見ると、千守の魂が既に抜けてしまい、透明な体がゆっくり座ろうとしていた。

大蛇:「畜生!」と大蛇が心の中で悲しんでいた。大蛇はもっと高く飛んで、名前の行方をふさごうとしたが、効果がなく、その名前が大蛇の体とすれ違って、上にドンドン上がってしまった。

大蛇がその名前を飛びまわってどうすればよいか分からず、空でふと落ち着くようになり、決心を固めたようにいきなり大きな口をあけ、正面からその名前を飲み込んだ。この時、地面にいた蔡千守の魂が相次ぎ体から遊離した。彼は空に漂って、自分の肉体がびしょ濡れに地面に寝ているのをぼんやりと眺めていた。

そばにいた医者、看護婦はCPR心臓、肺への復活救助を諦め、岸辺に向かって、「彼は死んだ」と告げた。

この時の蔡千守の状態をあえて表現しようとしたら、ぼうっとしていると言うしかない。彼はわかったようで、またわからなかったようだった。わかったのは、この情景からすべてがわかったはずだ、自分が死んだ、誕生日の日に死んだということ。しかし、分からなかったのは、死んでいないような感覚があるということ。痛みがなく、どこか気持ちが悪くもない。いい感覚だ。


蔡千守:「まさか、私は鬼になったのか?お母さん、お父さんは私が見えないのか?」ここまで考えると、千守は心の中から悲しみが湧いてきた。


千守がぼうっと天地に漂って、この事実をゆっくり味わっていたところ、大蛇がこっそり千守の魂の傍に来て、彼の顔をじっくり眺め、それから頭を下げ「こんにちは」とお辞儀した。


千守がこの荒荒しい声には驚いた。ぼんやりと振り返って大蛇を見つめていた。いま、彼は何を見ても、驚かなくなった。


千守:「あなた。。。私に話しかけているの?」

大蛇:「そうだよ。」この口ぶりから、大蛇も阿呆であることがわかった。

千守:「わたし。。。死んだのか?」千守が独り言を言ったように大蛇に問いかけた。

大蛇:「そうだ。わたしの主人。」大蛇はもっと卑しく頷きながら、答えた。

千守:「あなたの主人?そうか、あなたが我が家のあの翡翠から変身したのか?」千守がはっと悟った。

大蛇:「ええ。。。それは私の模様通りそのまま彫刻したもの。」

千守:「そう。。。それは失礼しました。」千守が何を言えばいいかわからなかったが、依然として礼儀正しかった。

大蛇:「わたしの主人、わたしのミスで、」大蛇が頭を下げて翡翠のことを考えてから、言い続けた。

「あなたを救うことができなかった。だから、あなたはいま。。。既に魂が抜けている。わたしがあなたたち蔡家族を守る小さな大蛇である。」


千守がこの声が荒荒しく、自分が小さい大蛇と称する大蛇を見て、「まさかお婆さんが話したことは本当のことだったのか。我が家蔡家族を本当に大蛇が守ってくれている。今日は、死んでから初めてその正体を見ることができるとは思わなかった。まったく。」千守がこう考えながら、思わずため息をついた。

「それで、わたしは、いま生まれ変わるか?」と千守がしばらくぼうっとしてから、こう聞いた。


大蛇はしばらく沈黙し、千守を意味深長に眺めていた。また、先ほど自分がやったことを思い出した。元々水の中にいた時、狄子裴の手にある翡翠を見て、じっくり考えずに彼は蔡家族の子孫だと思ったので、最後、やはり千守を巻く尻尾を緩めた。それで、慌てて尻尾を振ったら、巨大な水流が生まれ、狄子裴を水面まで押し上げた。しかし、この時、傍にいた蔡千守が水流の衝撃をうけ、真っ黒な河底に流されていた。


大蛇:「わたしが邪魔しなければ、蔡千守が死ななかっただろう。以前、蔡千守がわあわあと泣きながら人間に生まれた時、わたしは三生石(人間の前世、今世、来世が刻まれる石のこと)のところに行って彼の寿命を見たことがある。健康で長生きで寿命が86歳まである」大蛇は心にやましさを感じていた。


(この世には、死ななければならない人は、いろんな事情で一時死ななかったことが偶然にはあるかもしれないが、結構高い確率で、三生石に刻まれた寿命以上に生きることはない。一方、まだ生きる寿命があるのに、事前にあの世に行くということは、不思議な力がない限り、中々遂げるものではない。大蛇はここ数千年以来、ひたすら夫子寺の傍の秦淮河に隠すばかりのためか、天地の千人妖怪はみな、彼の存在に気付くことができなかった。まさか、いまちょっとした心得違いによりこんなに大きな災いを招くとは思わなかった。ああ、悲しいなあ。蔡家族の唯一の子孫を傷つけただけではなく、神様の規定を違反した。いったん閻魔に事実を知られたら。。。)


ここまで考えると、大蛇は思わずぞっとした。「もし千守にあの世に行かれたら、私の命も取られるであろう。。。じっくりと相談する必要がある」それで、こう答えた。「主人の寿命がまだあるので、あの世には絶対行ってはいけない。わたしはお名前を腹の中に飲み込んだので、あの世の鬼は知りようがない。戻る方法を考える時間を稼げるから。」

千守:「そうか。よかった!!つまり、わたしはまだ戻れる??それはあなたが、わたしの名前を飲み込んでくれたから?」千守は混乱の中で、大蛇が言ったことを理解しようとした。


大蛇:「そうだ、主人、その通りだ。人類が死んだ後、名前が先にあの世に飛んで、報告に行く。だから、さっきわたしはやむを得ず名前を腹に飲み込んだ。だから少なくともあなたはいま、まだ本当に死んでいるとは言えない。」


千守:「しかし、わたしはいま、魂になったよね。みなさまはわたしが見えない。況してわたしがもし本当に死んだら、医者はすぐ知らされる。わたしは火葬されちゃう。」

大蛇:「主人、突然のことで、わたしのことをまだ報告していなかったが、大変申し訳ない。わたしは蔡家族にお世話になり、この世には1500年間生きている。わたしは800年間の精華を主人の体に入れ、命を続けることができる。」と大蛇が微かほほえみを浮かべた。それから、目を閉じて集中して、口から光っている紫色の小玉を吐き出し、蔡千守の目の前に流した。


千守:「これは、あなたの精華?」


大蛇は、軽く頷いてちょっと息を吹きつけて、瞬く間に小玉を地面にいた蔡千守の体内に送り込んだ。

大蛇:「いま、安全になった」と大蛇は長いひと息をはいた。

千守:「それでは、いま、体に戻り蘇れる?」

大蛇は尻尾を軽くあげ蔡千守の肩を巻き慰めようとしたが、これを聞くと、思わず体が震え、尻尾を戻し、「わたしは知らない」と答えた。


千守:「あなたは知らない!!?」千守がこの巨大大蛇を眺め、信じられない顔だった。

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