あ、お宅は要らないか…ーめだかからの呼び名の話ー

「○○さんがさ、今年、観賞用にハスを買ってきたんだって」

M夫くんが珍しく、自分から職場の話をしてきた。


ハスと言えば、ドラマの「植物男○ベランダー」で、上手くやらないと植物として取り上げられていたんじゃなかったか!?


「うぁ、それ、室内で栽培してって話じゃない!?」

「いやいや、大きなカメみたいな入れ物に入れて順調に育ったんだけど、ボウフラが湧いちゃったんだって」


そっか、室内に置いておいても、どこかから蚊が侵入しちゃったんだね…

ドラマ「ベランダー」が頭から離れない私は思った。


あらー、じゃあ捨てちゃったんだね、残念…と言ったら、

「いやいや、庭先に置いてたらしくてさ。で、ボウフラを食べてくれるってことで、めだかを買って入れておいたんだって」


この話、先が見えなくなってきた。

めだか??

M夫くんがわざわざ自分から話してきたってとこからして、なんか、こわい。


「で、見事にボウフラがいなくなったんだって」


なんだ、よかったじゃん。


「ところがさ…」

いやん、やっぱり、なんかこわい(笑)


「そのめだかがすごく繁殖して増えちゃったんだって。それで、誰か要らないか? って、○○さんが訊いて回ってたんだよ」

なーんだ、そんなことか。

って、えっ!? まさか、もらうことにしてないよね!?


「うん、興味はあったけど、(たぶん私を思い浮かべて)はっきりと断らないで曖昧な感じでいたら——」

やっぱり、押し付けられちゃったの!?

内心、戦々恐々としながら、ゴクリとツバを飲み込んで話の先を待つ私。


「めだかの飼育をオススメする理由をアピールしてきたんだけど、それがさぁ『夫婦の会話が増えるよ〜!』だったんだよね(笑)」


なぁーんだ。だったら、そんなん要らないやん。

「もちろん、うちは間に合ってます、って言ったんでしょ?」


すると、M夫くんは可笑しそうに言った。

「いや、こっちが言う前に、『あぁ、たまきさんとこは、要らないか(笑)』って言われたんだよね」


なにそれ。

私たちの仲良しぶりが、職場でも認知されちゃってるの!?

「いや、それはよくわからないけど、○○さんもそれなりのトシの人だから、何年も前のこともついこの前みたいな感じで、今だにうちが新婚だと勘違いしてるのかもね」だそうだ。


それにしても…この話をしてる間、なんでM夫くんがずっと可笑しそうにしてるのかと問うと、

「いや、うちは確かに会話はあるけど、しゃべってるのはいっつもだよな、と思ってさ」

ということだった。


うん、確かにね、そうかもしれない。。。


ってか、「そっち」ってナニ?

結婚して何年も経つのに、今だに名前で私を呼ばないM夫くん。

いい加減、それってどうなの!?

と、思った夜だった。


M夫くんメモ:

「そっち」はまだいい方で、私のことを言う時に、巧妙に主語を省くような話し方をしようとするのは、いかがなものなの?

最初のころの方が「みさえさん」と、さん付けではあるけど具体的に名前を口にしてくれていたのに、最近の方が、それすら言わなくなってきている。慣れたら、呼び捨てかを目標にしていたはずなのに、むしろ後退している気がする。

どこまで照れ屋なの!?

ここまで来たら、一生呼んでもらえないのではないかと思えてきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る