最後の晩餐は?ーまたは、好きなおみそ汁ー

「えっ!? そんなんでいいの?」

なんだよ!?」

私は唖然とした。


それは、もしこれが最後の食事——いわゆる最後の晩餐——だって言われたら、何を食べる? って話をしてた時だ。


私はガメツいので、牛ステーキがどうとか、しゃぶしゃぶだのすき焼きだの、極上のの握りだのと、ここぞとばかりの浅ましい食欲全開で熟考し、デザートも付けたいしなぁ…とか迷いに迷って決めかねているというのに、M夫くんったらこう言ったのだ。


「炊き立ての白いごはんの上に目玉焼きをのせて、七味唐辛子をたっぷりふりかけて醤油をたらして、食べたいかな」


なヌなヌ〜っ!?

そんなんじゃ、このわたくしの「この期に及んでの往生際の悪い欲深さ」が目立ってしまうじゃないか!?


そうなると、じゃあ、実家のミートソースでもいいかなぁ、と私もトーンダウンさせざるをえないわけで。。。


ついには、「卵限定だったら、私は卵かけごはんがいい(できれば納豆付き)」となった。


最後の晩餐なのに。。。


……いや、わかるんです。

最後だからこそ、いつも食べ慣れてる中でも、こよなく愛している、何てことのない平凡なメニューを食べて終わりたい、という気持ちがあることは。

あるいは、思い出のあの味、とか。


でも、そうなると本当にますます決められない。

あまりに難しいので、方向を変えた。


「じゃあ、最後に食べたいおみそ汁の具は?」


これなら、落としどころが見つかりそうだ。


案の定、二人とも「わかめとじゃがいものおみそ汁」が一位だった。

M夫くんは「玉ねぎと油揚げのおみそ汁、とも迷うけど…」と付け加えたけど、わかめとじゃがいもで決定した。私があまり玉ねぎが得意じゃないので。


めでたしめでたし…というところで、M夫くんが言った。

「でもさ、最後の晩餐なんだから、お互い好きなもん別々に食べてもいいんじゃないの?」


えーーーーっ!

最後なのに、別々のもの食べるのぉ!?

それって、なんかさびしい。。。


「いつもお店とかでも、別のもの頼んで、ちょっとずつシェアしてるんだから、その方が種類多く食べれておトクじゃない?」


確かに確かに。その手があったね。

でも、それだったら、目玉焼きのっけ丼をシェアされてもなぁ〜 ブツブツ……


こんな、緊急性のないどぉーでもいいことを、しょーもないほど真剣に話し合う私たちであった。。。


M夫くんメモ:

M夫くんは、お酒があって、焼き鳥とかおふくろの味的なちょっとした肴があれば満足な人で、ふだんのごはんは、自分からあまりあれ食べたいこれ食べたいと主張しない。

私が献立を決めかねて「なに食べたい?」と訊く時でも、基本、何でもいいという感じで、どうしても決めてと頼むとやっと冷蔵庫の食材を見て、「これとこれで、こういうふうにするのはどう?」と提案してくれる。

要求してこないのがラクでもあるけど、張り合いがないと思うこともある。

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