この中でずっと生きていこうーそれってやさしさ??ー
「うん、いいよ。この中で、ずっと生きていこう」とM夫くんが言った。
すごくやさしい言葉に聞こえる。
私が「ごめん、私、片付ける気力が全然湧かない」と言った時の返事でなければ。
このところ、我が家はしっちゃかめっちゃかだった。ふだんからお世辞にも片付いてるとは言えないところに、うちの母の引っ越しで出た不要品を引き取って来たからだ。
いつもの自分たちの持ち物が放牧されてるところに、さらに段ボールやらデカい紙袋やら45リットルのゴミ袋やらが無造作に置かれ、いつもの物が見えなくなるくらい盛大なカオス状態。なればこそ、すぐに片付けるべきだったのだけど、いろいろあって疲れていて、頭も混乱していて、とてもじゃないけど気力が湧かない。そんな私の気持ち、M夫くんならわかってくれると思った。
なので、できれば「じゃあ、せめて自分の物だけでも片付けるね」と言ってほしかったよ。さらに、「なんなら、不要品の片付けも手伝うよ?」と言ってくれたら最高だったよ、M夫くん。
「この中でずっと生きていく」って、そりゃ、何もしなければ必然的にそうなるよね。
期待した方がバカだった。そういえば、M夫くんは「掃除をしない」人だった。
入籍したあと、同居する物件を探しに私が泊まりがけでM夫くんの家におジャマした時、M夫くんはそこに住んで3年近くたっていたのだけど、初めて掃除したと言っていた。それも、トイレとお風呂だけ。居室は、彼が歩き回るところだけは床が見えていたけど、それ以外の場所には当たり前に厚くホコリが敷き詰められ、「これはカーペットか」と思いそうになるくらいだった。
そういうわけなので、冒頭のセリフはM夫くんの精一杯のやさしさってことにしておこう。
つい最近、私も気力を振り絞って、リサイクル品だけは整理してあちこちに持って行ったのだけど、いっしょに運んで、店までつき合ってくれた。
ありがとう、M夫くん。
M夫くんメモ:
M夫くんの独身の時の部屋は、私が過去に見た「すごい部屋ランキング」で即座に2位タイに入った。
ちなみに3位は、台所の調理台が全面油のかたまりで覆い尽くされた部屋。
2位のもう1件はやはり掃除をまったくしてないという部屋で、カーペットに座って体がかゆくなった人がいた部屋。
堂々の1位は、トイレの便器が全面真っ茶色だった家。
いずれも、男子一人暮らしの家だった。
今も、床に液体をこぼした時など、油断してるとM夫くんは履いてる靴下で拭き取ろうとすることがあるので、要注意!
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