ありがとうのしるしーポイント制度導入ー

「え? 天国にそんなコネが!?」

不審そうにM夫くんが訊いた。


以前、うちの母のことで、M夫くんに休日返上で力仕事を手伝ってもらった時、私が最上の感謝を込めて「ありがとう、このお礼に、天国でM夫くんのための特等席を設けてもらえるように私から頼んでおいたよ」と言ったからだ。


「そうそう、実はね、コネがあるんだよ〜」

ふぅ〜んと取り合わないM夫くんだったが、いつもやさしく、どんな時も頼み事にイヤだと言わないM夫くんに何とか報いたい。少なくとも、私がどれだけ感謝してるかを具体的に表したい。


というわけで、我が家ではポイント制度を導入しました。


だいぶ前から私はM夫くんの頭を見ると、両手のひらで後ろからこねくり回したい衝動を抑えられず、「クリクリする」と称してなで回しているのだけど、そのたびにM夫くんは「それの意味がわからない」と言っていた。理由はただ、頭の形がからで、それ以上でもそれ以下でもない。頭頂部の両側の曲線が手のひらにフィットして、とにかく気持ちいいのだ。


せっかくなのでこれを生かして、私がM夫くんの頭をクリクリすると、そのたびにクリクリポイントが入ることにした。衝動的にクリクリする以外にも、何かしてもらったら積極的にクリクリする。私も楽しいし、M夫くんもポイントが溜まってwin-winだ。


M「そのポイントって、何に使えるの?」

私「天国に行ったら、ポイント数に合わせていろんな特典が受けられるんだよ」

M「現世で受けられるサービスじゃないのかぁ。そもそも天国に行けないかもしれないのに?」


そんなことはない、M夫くんが天国に行かなくて誰が行くと言うの!?


しかも、クリクリポイントを保有してるってことは現世で徳を積んだってことなのだから、これだけポイント数があれば行けないわけないんだよ。


ちなみに、この前は私の実家側のお寺参りに関連していろいろと面倒を見てくれ、大活躍だったM夫くん。

また頭をクリクリなで回しながら「今日は、一万クリクリポイント入ったからね」と言ったら、「一万ポイントで、どんな特典もらえるの?」と訊くので「天国の豪邸にプールが付くよ」と答えた。


M「え、泳げないからプール要らないな」

私「んー、だったら、特別に温泉スパにしてもらうように言っておくね。浸かりながらお酒も飲めるようなヤツ」

M「ふ〜ん、そんなコネあるんだ」


……ヤバいことになってきた。

その前に、私が天国に行けるように、否、天国とのコネを維持するために、徳を積まなければならない!


M夫くんメモ:

スケジュールが合わない以外の理由で、頼み事を断ってきたことがない。このことに気づいた時、私は本当に驚いたし、あらためてありがたいことだと感謝するようになった。

そんなM夫くんが絶対に天国に行き、快適に幸せに暮らすべく、これからもM夫くんが徳を積む機会をせっせと提供しなくてはならない!?

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