「小人さんが来た」ー我が家のファンタジーー

M夫くんは「秘密の扉」を持っている。

名付けたのは私だけど、M夫くんもそれに乗っかって「自分だけのおやつ(おつまみ)保管庫」を楽しそうに自主管理している。


それは小ぶりのリビングボードの棚の一角にあって、ふだんは目隠しカーテンで見えなくなっている。晩酌の時にカーテンの下に頭を潜り込ませて、ゴソゴソとおつまみを見繕っている姿が、はちみつを見つけたくまのプーさんみたいでかわいくて、

「あー、くまちゃんが『秘密の扉』を開けて、おやつをあさっています!」とついつい私は実況を入れてしまう。


すると、カーテンの下から出てきたM夫くんは「食べる?」と分けてくれるもんだから、私は知ってしまった。扉の向こうには時々、私にとっても美味しいものが入っていることを。


ある時、いつものようにゴソゴソと扉の向こうを検分していたM夫くんが、「あれ?食べちゃったっけかなぁ」と言っているのが聞こえた。

そうだ、前に分けてもらったおやつがすごく美味しくて、また食べたくなった私がこっそり失敬して、全部平らげてしまっていたのだ。

まだ残っていたのを覚えていたとは、まずいことになった。。。


「あのねー、今日、小人さんが来たんだよねー。それで、なんかそこでガサゴソやってたけど、気づかないふりして放っておいたんだよねー」


試しにそう言ってみたら「そっか、小人さんの好きそうなお菓子だったもんね。しょうがないね」とM夫くんは答えた。


それ以来、うちにはしょっちゅう小人さんが、それも大挙してやってくるようになったのだが、相変わらずM夫くんは小人さんにやさしい。絶対に怒らない。

「あまり甘やかさない方がいいよ」と私の方が言うくらいだ。それでもM夫くんは「いいよ、想定内だから」だそうだ。


小人たち、あまり調子に乗るな。

って、私のことかっっ。


M夫くんメモ:

私は今まで、こんなに食い意地の張ってない、仏のような人を見たことがない。しかも大食漢なのに、譲り合いの精神がすごい。

男三兄弟の中で、長男なのに次男より弱かったというM夫くん。やられるよりは譲る方がキズが小さくて済むと学習でもしたのか。

私よりM夫くんの方が倍近く大きいので、ごはんのおかずなどはなるべくM夫くんに譲るようにしているのだけど、私の好きなものに関しては譲ってくれようとするので、あまり甘え過ぎない程度に厚意を受けるようにしている。

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