ある妄想ー残されるものー

******

前回、過去の別ブログでの投稿をほじくり出したばかりなのだけど、そういえば、結婚してから書いた=実際に伴侶を得てからの妄想話があったことを思い出したので、性懲りもなく、また転載させていただきます。

2016年のものです(加筆訂正あり)。

******

我が家では、訃報に接した時などに、「旅立つ時はどっちが先だろうか」って話をしたりするんだけど、このたび、またある方の訃報に接し、M夫くんが以前に言った言葉を思い出していました。


M夫くんは自称「情が薄い人間」だそうで、ずっと前、それが具体的にどういうことなのか説明してもらったところ、こりゃ、私が先に旅立った場合、M夫くんは泣かないかもしれないなって確信し、それじゃあ悔しい(?)から、絶対に私は先に行かないぞってあらためて決意した、なんてことがあった(結婚する前から、愛する人の人生すべてを見たいから、先には行かないって決めていたのだが)。

それを踏まえて、一応本人に「万万が一あとに残されたら、どうする?」って訊いてみたら、「(私の)保険金でいい楽器を買って、それを弾こうかな」って言ったのだ。


その言葉、その情景を思ったら、なんだかちょっと涙が出た。


M夫くんは泣かない(だろうって言ってる)のに、私が自分で泣いてどうする。。。



今回、訃報が届いた方は、先に奥様を亡くされていた。

それはそれは大きな悲しみだったことと思う。

でも、晩年になって突然(?)生まれた末のお子さんが自立するまで、男手一つでがんばると言っていた。ご自身も病気を患ったりしていたけど、末の娘さんがまだ小さかったというその状況が、逆に大きな生きる支えになっていたのかとも思う。


私も出席した葬儀のあと、お父さんにそっくりのその末娘さんは、お父さんと同じ笑顔で「大学受験をがんばる」と言っていた。その強さも、お父さん譲りなのだろう。


そして、彼女の笑顔を見ながら、私の中で、故人がこの子を一人で育てていたその情景と、うちのM夫くんが保険金で買った楽器を弾いている情景が、何となく重なってしまった。


残された者が生きていく。

その情景には、哀しさと強さ、そしてきっと”愛情”が満ちている。


…と、思いたいんですけど、M夫くんは「愛って、よくわからない」とかまた言うに違いない。

あぁ、悔しい!!やっぱりゼッタイに、先には逝かないゾ!!!


******

M夫くんメモ:

自称「情が薄い」「人を好きになったことがない」「愛するってよくわからない」人間なので、そこは申し訳ない、とか結婚前から言っていた。

好きとか愛とか、そういう感情を実感させてやる!というのを、引き続き目標として励むべし。

※ちなみに、M夫くんはアマオケで弦楽器を弾いている。

******

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る