M夫くん、発見さる~妻による夫の生態観察ノート~

たまきみさえ

§ 令和1年度 §

ポイントはそこじゃない!ーオゾンホール事件ー

「待って、私、オゾンホールはどうでもいいの!!」


入籍し、同居し始めて間もないある日、M夫くんとの会話の途中で私は叫んだ。


思えばこれが最初だったかもしれない。

私とM夫くんの会話が、なぜかあらぬ方向へ行きがちだという現象に気づいたのは。


以来、友だちなどにM夫くんとのかみ合わなさを説明する時に、この会話を実例として使用してます。


私たち夫婦のかみ合わない会話の記念すべき第1号、その発生状況はと言うと。


あれは、新居にお互いの荷物を運び込んで、ヒマを見て少しずつ片付けていたころだった。M夫くんの荷物の中に、サングラスを見つけた私。


私「これ、せっかく持ってるなら、運転の時にかければいいんじゃない?長い時間運転する時、M夫くんの目がずっと紫外線にさらされるのが心配だったんだよね」


M「え、全然気にしてなかった」


私「ほら、今、オゾンホールが広がって紫外線の量も増えてるから、皮膚だけじゃなくて目も気をつけた方がいいって、あちこちで言ってるよ」


M「え、オゾンホールって、極地の話じゃないの?」


私「えっ。…っと、でも、日本のテレビがうるさく言ってるから日本も影響受けてるってことだよ、きっと」


M「そうかなぁ、紫外線ってまっすぐ届くもんじゃなかったかな…」


私「え、紫外線って、よく「飛ぶ」とか「屈折」とか言うよね」


M「そんなに遠くから飛んで来るかなぁ」


私「だったら、何で日本でも大騒ぎしてるの? いっぱい来てるんだよ、きっと!」


M「大騒ぎって…テレビの言うことでしょ? そもそも、オゾンホールっていうのは…」


ここで、冒頭の私のセリフが来たんでした。

そして…


私「私はただ、M夫くんの目が心配だったの。だから、これを持ってるなら使ったら?って言っただけなの。使うなら『そうだね』、使いたくないなら『いや、要らない』。これだけの話なの!」


M夫くんはちょっと驚いて、そして、ちょっとだけ不機嫌になって、「要らない」とつぶやいた。


断っておくと、私はオゾンホールについては、深く憂いている。決して「どうでもいい」とは思っていない。フロンガス対策にも、誠心誠意、協力している。


そして、M夫くんに悪気がないこともわかっている。

ただ、M夫くんは気になっただけなのだ。自分の目よりも、「オゾンホールと紫外線」の真実の方が。


結婚する前は、仕事がら文系かと思いきや、中身はバリバリ理系クンだったらしいことを知った瞬間だった。



M夫くんメモ:

会話のポイントをしばしば思い切りスルーし(たぶん無意識)、枝道に深く入っていくことがある。

特に、科学的事実が絡む時は要注意。

油断してその流れに乗っかると、何の話だったのかわからなくなる。

話のポイントを見失わないように、常に注意すべし。

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