19.徒花甚だしい
「子供が欲しいな」
詰まらなく、出来の悪い十七歳が言った。
本当にそう思うのなら、もう少し物事を知るべきだ。
将来性もろくに無いくせに、そんな事を考える様な低俗な遺伝子を後世に残す理由が僕には分からなった。
「私、子供が好きだから将来は保育園の先生になりたいな」
味気なく、未発達な十七歳は言った。
そんな甘い考えで勤まる労働は無い。
理想と現実の境が確立できていない。
まるで犯罪者予備運みたいなことを堂々と口にできる理由が僕には分からなかった。
どいつもこいつも、薄っぺらな価値観を共有して満足できる理由が僕には分からなかった。流されるだけ流されている癖に、自分の道を生きているつもりでいられる意味が僕には分からない。隣の奴が自分と似た様な姿をしているのを見て安心できる理由が分からない。碌な知識も無く、考える力も無いのに自分に自信を持てる理由がわからない。分からない、分からない、分からない、分からない、分からない、分からない、分からない、分からない、分からない、分からない、分からない、分からない、分からない、分からない、分からない、分からない、分からない、わからない。
唐突に、人間社会に逃げるなと言われた気がした。
他の動物が危機に遭遇した際に真っ先に背を向けるのに対し、人間にはその機能が無い理由がわからない。
もう、この世界には私を引き留める何かは無いような気がして、朝も待てずに飛び降りてしまった。
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