17.ゴースト&ダンス

 目が覚めてきのうを思い出す。

 

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 目が覚めて、最初に浮かんだ感情はおそらく感動だったと思う。

 天井に大きな穴が開いており、そこからは満点の星空が見えた。

 そして辺りを見渡す、自分はベッドの上に横たわっており、それ以外にこの部屋には何もない。そしてところどころ破れた汚れの目立つカーテンが、窓のはめられていない窓枠から流れる夜風に揺られていた。

 壁紙は白。こんな殺風景な場所で自分は一人暮らしをしていたのだろうか。

 わからなかった。自分の名前も、年齢も、身分も記憶になかった。要するに、ふと目が覚めると、記憶が無かったのである。

 昨日はおろか生まれてから今までの一切を思い出すことが出来なかったのである。

 何もかもがわからない、そんな状況の中でこの星空の影響か、何故だか不安や焦りはなかった。

 全身が重く思うように動かすことが出来ない。まるで永い眠りから覚めたような感覚だった。そう考えたが、今の自分にはどのくらい寝ていたのかを判断する術はなかった。

 寝返りを打つのもままならない状態だったがどうにか体を動かそうと、必死にもがいていると、今までは見えなかった足を向けている方向に扉が見えた。

 木製の扉は、何故か木の板で固く閉ざされていた。それでもこの部屋にはその扉以外には出入口は見当たらない。窓はあるがおそらくここは高所であろう、隣の建物が下に見える。

 体の自由が戻ったら、あの扉の方へ行ってどうにか外に出る方法を探してみるか。そんなことを考えながら、もぞもぞとストレッチを続けた。


 しばらくすると、窓の外から物音が聞こえてきた、そして何人かでひそひそと話をする様な音も聞こえてきた。そしてその音源がこの建物の中に入ってくるのがわかった。階段を上る足音が聞こえ、それは数人から数十人はいると思えた。

 恐怖や不安は無かったが、さすがに焦りはあった。早くどうにかここから動かなくてはともがくが思うようにいかない。そして音の集団は扉の前で止む。


「突入‼」


 武装した大勢の人間が部屋へと入ってくる。そして自分を取り囲むように手にした武器を向ける。

 思い出した。

 その瞬間、窓の外がオレンジ色に輝きだす。

 そうだった。私も早く始めなければ。

 ようやく自分のきのうを思い出した。


 


 

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