祭りの後

「ダーツ事件」の翌日、雄二と裕之は清々しい気持ちで迎える事が出来た。

いかついおっさんの逮捕劇に加え、必死でかき集めた100万円が戻って来たのだ。

二人は昨日の一件について、近くのコンビニのイートインコーナーであの事件を振り返っている。

「しかし、やったな」

「何をだ」

「昨日の一件に決まっているだろ」

「それか。まぁ予定通りだ」

「またまたぁ、そんな事言っちゃって。ホントはドキドキだったろ?」

「なぜだ?そんな訳なかろう」

「しかし、美人さんのウインクがおっさん逮捕の合図だったとはな」

「予定通り」

「ホントか?いつの時点でそう思った?」

「美人さんとおっさんの距離感だな」

「今思えば、不自然だったしな」

すると、裕之の携帯が鳴った。

「もしもし」

「北条冴子と言います。昨日の一件のお礼、まだだったわね」

美人警官は、北条冴子というらしい。

「はぁ。別にいいっすよ。自分らの問題を解決しただけだし。でも、刑事さんのウインクの意味合いを拾ったのはナイスだったでしょ?」

「まぁ、そうね。解りづらかったでしょ?滅多にしないから」

「美人な方の行動は逐一見てますから。あはは」

「私がその枠に入ってて良かったわ」

「あははは」

電話口のふたりと、雄二の笑い声が響き渡った。


事件解決の翌日、あんなに天気が良かったのに打って変わって結構な雨模様になっていた。

「あら、やだわ。雨が降ってきたわね。屋根、大丈夫かしら」

雄二は昨日の一件で、自宅の雨漏りの件をすっかり忘れていた。

雨は割と強い模様で振り続けた。雄二は少し心配になり、外から様子を見に行こうと玄関の扉を開いた。扉を開けるなり、裕之が傘を差して玄関に立っていた。

「いよっ」

「いよっ、じゃねえよ!雨が酷いこの時分に何の用だ?」

「先日はミッションクリア、ご苦労。その報酬だ。大切に使え。じゃぁな」

そう言うと、見覚えのある封筒だった。中には手つかずの100万円が入っている。

雄二は慌てて裕之の後を追う。

「おい、これはあんときの金だろ? 」

そう言うと、裕之は背中越しに右手を振る。

雄二は封筒を握りしめ、裕之の背中に一礼した。

その後、雄二の家は雨漏りする事はなくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る