ぶち破るダブルクロス EXTRA Edition

ちりめん

第1話 れみさな執務室雑談 お題「新元号」

●ステージ:エンドライン


●登場人物

・“血染め伯”赤羽玲実あかばね れみ(16)

ネクストイレギュラーを生み出した故・赤羽博士の娘。

定位置は執務机。

好きな言葉は「尾生の信」。


・“真紅の稲妻”東山早南とおやま さな(17)

ユグドラシル幹部“ティターン”の娘を名乗る少女。

定位置は来客用高級ソファ。

好きな言葉は「やぶから棒」。


●前回までのあらすじ

新元号施行が間近に迫ったある日。

例によって例のごとく赤羽玲実おともだちの執務室に入り浸る女子高生・東山早南は、新年度で多忙を極める玲実の目の前でさも深刻シリアスそうな顔でダラダラしていた。





早南「はあ~……平成、終わっちゃいますねえ」


玲実「ん」

早「新しい元号知ってますぅ? 令和ですよれーわー……」

玲「そりゃあ知ってるけど……何が不満だ、万葉集に親でも殺されたのか」

早「試験でひどい目にはあわされました。理系なので」

玲「ノイマン」

早「ノイマンにも向き不向きがあるんですよぅ」

玲「はいはい」

早「それで令和ですけど」

玲「うん」

早「かっこよくてむかつきます、おもに令。気取ってやがります」

玲「ひどい言いがかり」

早「令のつく名前の子、増えそうですよね」

玲「あー」

早「玲実とか」

玲「ほう」

早「名前に令が入ってる人はいいですよねぇーかっこよくてぇー」

玲「急に殴りかかってきた」

早「王に令で玲とは贅沢な名前だねぇ」

玲「40点くらいの物真似やめろ」

早「平成仮面ライダーも令和仮面ライダーですよ。一歩戻って二歩進む感じ」

玲「語感“昭和”っぽいから」

早「令は未来感ありますけど」

玲「うん」

早「レイワって仮面ライダーにいそうですよね」

玲「次のライダーは令和モチーフかもな」

早「仮面ライダー万葉集、上の句かるたと下の句かるたで変身します」

玲「令和どこ行った」

早「マスクのデザインでひとつ」

玲「よかろう」

早「4500首なのでかるたは4500枚、別売り、劇場特典、プレバン」

玲「親御さん大変だな」

早「2号ライダーは仮面ライダーJ-POP」

玲「一気に時代飛んだ」

早「イケメンに懐メロ歌わせてお母さんを狙い撃ち、関連商品バカ売れです」

玲「お前、発想が基本金儲けだな」

早「資本主義の犬と呼んでください」

玲「資本主義の犬」

早「そんなに褒められると照れますねぇ」

玲「いや、褒めたつもりはない」

早「それはそれとして古今の歌バトルはエモポテ(※エモさポテンシャル)あるかと」

玲「まあ」

早「歌バトルいいなー歌バトル、私も歌バトルしたいですーカラオケ行きましょ?」

玲「前置き長かったな」

早「たまには趣向を凝らして誘ってみようかと」

玲「遊びに誘う和歌うたったら考えるよ」

早「理系にむごい仕打ち」

玲「理系を言い訳にするな」

早「ところでブラックホールが話題ですけど」

玲「一気に話飛んだ」

早「ワームホールだけに」

玲「ドヤ顔やめろ」

早「インターステラーという映画がありまして」

玲「お前が持ってきたのでは珍しく面白かったやつ」

早「私めちゃくちゃ大きいもの見るの好きなんですよ」

玲「わからんでもない」

早「ブラックホールやばたん」

玲「語彙」

早「理系なので」

玲「理系こそ語るトコだろ」

早「ブラックホールってたまごっぽいですよねぇ」

玲「それはわからない」

早「丸いしぃ」

玲「……」

早「丸いし」

玲「お前のたまご判定ガバガバな」

早「伯爵サマたまご肌ですよね」

玲「この流れで言われても嬉しくない」

早「いいなぁーブラム=ストーカーはお肌きれいでぇー」

玲「……」

早「あっ、照れてる」

玲「照れてない」

早「伯爵サマ褒められるの苦手ですよね」

玲「うるさい」

早「いつもお仕事頑張っててエラいですねぇ~」

玲「お前にも仕事振ってやろうか」

早「黙りまーす」

玲「……」

早「ところで令和さん」

玲「黙ると死ぬのか理系」

早「寂しくて死にます、メンタルうさぎさんです」

玲「お前はマグロとかサメだと思う」

早「サメといえば観たい映画があるんですけどぉ」

玲「しまった」

早「『ダンディシャーク』」

玲「だん……なに?」

早「『ダンディシャーク』、紳士的に人を襲います」

玲「キングスマンかなにか?」

早「まあだいたいそんな感じです」

玲「うそつけ」

早「気になってきました?」

玲「いや別に」

早「ところで伯爵サマ」

玲「“ところで”といえばどれだけ話変えても許されると思うなよ」

早「理系わたしの計算ではそろそろお腹が空く頃合いと見ました」

玲「ん」

早「ごはんいこ ごはんいきましょ ごはんいこ いってくれなきゃ でまえとります」

玲「なにそれ」

早「ご飯行きましょの和歌うた

玲「あー……」

早「行ってくれなきゃ出前取ります、ニンニクきっついやつ」

玲「テロリストか」

早「遊ぶためなら私、女捨てられますよぉ」

玲「お前の女はどうでもいい」

早「うさぎメンタル傷つきましたー」

玲「けど」

早「けど?」

玲「冗談でも自分で出した条件を反故にするのは、道理に合わない」

早「その絶対損する性格、つけ込みやすくて好きですよ」

玲「そりゃどうも。以前まえに同じこと言われたよ」

早「同じこと?」


『他人の命を背負って生きるなんて、これまでの比ではない苦痛でしょうに』

『この道を選んだことを、人間あなたたちはいつか、きっと後悔する』


玲「損だろうと、自分の道理に従って未来まえに歩き続けたいってこと」

早「……なんか」

玲「なんか?」

早「前向きな伯爵サマって気持ち悪いですね!」

玲「自覚はある。ほら行くぞ」

早「あ、はい。やったー帰りにツタヤ寄りましょー」

玲「キングスマンね」

早「ダンディシャークですって」


 れみさな執務室雑談 お題「新元号」-a certain girl's Future- (了)

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