ビートルズ その前にカーペンターズ

pinokopapa

第1話

 前回までは、1968年にたどり着く前の、朝鮮戦争について考えてきました。この戦争は、敗戦後の日本を運命付けた出来事といえます。しかし、我々世代がリアルタイムに生きてきた時代でったにもかかわらず、これについては何も知らなかったことを逆に思い知らされました。それにしても、あまりに迂遠なところから始めたものだと思います。この戦争の後、次のメルクマールは、例えば明人殿下の結婚、東京オリンピック、万博と数え上げられるでしょうが、ベトナム戦争も含めて団塊の世代が一躍時代の表に飛び出してきたことであったと、指摘すべきことではないでしょうか。

 1960年では、私たちはまだこどもでした。「されど我らが日々」も叔父さんの書いた古臭い、まさに10年も前のものとしか思っておらず、読んでみようとは思いもしませんでした。政治? そんなものにかぶれるのはとんでもないこと、そんな意識でした。あるひ、春でしたか、大学の理学部の建物の前に一台に乗用車が乗りつけられておりました。だれでしょう、それを県警の車だと分かったのは。誰かが、これは警察の車だと騒ぎ出しました。私はそこにとおりかかって見ておりました。だけど、大学の構内に警察の車が入って来て、何が悪いと言ってるのか、解りませんでした。何か用事があったら警察だって来るだろうくらいに思いましたから。しかし、騒ぎが次第に大きくなり、幾重にも学生が車を取り囲みます。何か大声を出すもの、私のように黙って佇んでみてるもの、走り出すもの、その走り出したものはもっと人を集めに行ったのでしょう。そのうち、例のメガホンが登場しました。学生会館の前で、プラカードを立て、何を怒鳴っているのか分からないアジをがなりたってているメガホンです。そうかなあ、これ、警察の車かなあ、私は傍らの友人に訊いてみました。そのとおり、その車は県警の鑑識の車で、理学部に判断を依頼に来たものだと、すぐその後解りました。騒ぎを知って表に出てきた県警の鑑識の係官が、学生につるし上げに会います。警察のご威光もありません。なぜ大学にはいりこんだ、と問い詰められます。学問の自治、大学の自治が正義でした。官憲の立ち入る所ではない。それが当時の社会的共通認識であって立ち入ってはいけなかったのです。

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