PM1:59

 要するに、俺は教師に生贄にされているわけだ。こっちの方が圧倒的に闇属性だと思う。


「いやいや、あかみちん。そりゃねぇだろ。俺にこの場の全員と闘えって事か?」

「そういう事だ。簡単だろ?」


 完全に他人事な物言いだなちくしょー。


「ほ、他に適任がいると思うぜ?」

「例えば?」


「例えば……そ、そう、悪魔とかだ。先輩を呼んで」

「あの優しい先輩にみんなで襲い掛かれと? 悪魔か、お前」


 この悪魔め! 人間のクズが! と四方八方から浴びせられる罵声。理不尽だ。


 いっそのこと、家に電話してルシファーを連れてきてもらおうか、とも思ったが、それはそれで後が面倒そうだ。却下。


「よし、三崎が名実ともに悪魔化してくれた。お前達の力を三崎に見せてやれ!」


 うぉぉぉぉ! と気勢を上げる生徒達。ノリノリだなお前ら。


「……一応聞くけど、勝敗は?」

「折角だから、とことんやるか。どっちかが死ぬまで」


 マジか。って事は、俺は今からこいつらに殺されるか、こいつら7~80人近くを皆殺しにしないといけねぇのか。


 どっちもイヤだっつの。殺すのも殺されるのも精神的にキツイ。体育の授業で育むべき精神と正反対じゃねぇか。


「なんや大変な事になってもぉたな~」


 と、波根さんが俺に話しかけてきた。この中で唯一、テンションがまともに見える。


「なぁ波根さん……助けてくれ」

「あー……えっと、頑張ってぇな?」


 微妙な笑みと共に言った彼女は、元居た朝礼台の方に走っていった。


 あんな短い時間で育んだ友情など、儚いものだな……中二病の下りを何かのはずみでポロっとこぼしても、バチは当たらないような気がする。


「よし、それじゃあ時間も少ないし、とっととやるぞ」


 あかみちんの指示で、生徒たちが俺と相対するように構える。うわ、マジで俺一人かよ。


「さぁ、勇者諸君! 魔王三崎を討伐するぞ、気合を入れろ!」

『うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』


 だからなんでそんなノリノリなんだよ! そんなに俺のことが嫌いか、なぁ!?

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