PM1:56

 さて、魔術実習を横目に雑談を続ける俺と波根さん。彼女の奥底に眠る中二病魂を刺激しないような話題を選ぶと、わりと話は盛り上がった。

 

 ときおり、「うちは違うからね!」的なニュアンスの言い訳を挟んできたけど、うんうん、分かってますよ。誰にも言いませんから、俺は。


「よーし、集合しろー」


 と、あかみちんが実習中の生徒たちに招集をかける。俺と波根さんは首を傾げた。


「? まだ時間、10分くらいあるやんな? 終わるの早ない?」

「確かに。でもまぁ、俺らも行った方がいい、のか?」


 これで授業が終わりなら、見学組に俺達も合流すべきだろう。動きあぐねる俺らに、あかみちんが手でこっち来いと合図してきたので、小走りで中に交じった。


「よし、みんなお疲れ。最後に、ちょっとしたイベントをやろう」


 ……古文の時もこのノリから変な方向に進んでいったよな、確か。流行ってんのか、この形式。


「イベントってこの時間からですか?」

「もうだいぶ疲れてるんだけど」


 生徒の一部がそんな事を言う。まぁ、言いたいことは分かる。内容はアレだが、一応体育なんだしな。


「ああ、イベントっつっても、すぐ終わる。ぶっちゃけ、俺も今思いついたんだし」


 にやり、と笑みを作ったあかみちんは、生徒を見回しながら続ける。


「さっきまでの魔術実習は、完全に一対一サシを想定したものだ。だが、状況によっては、大人数で戦う必要もあるだろう」


 ねぇよ。どこの高校生が大人数で戦うシチュエーションに出くわすんだ。……ない、よな?


「そこで、強敵を相手に闘う事を想定した魔術実習だ。面白そうだろ?」

「って事は、教師のあかみちんが相手って事ですか~?」

「アホか、別に俺は魔術が得意なわけじゃねぇよ。ほら見ろよ……うってつけの強敵が、そこにいるじゃねぇか?」


 ……こっち見んなあかみちん。 



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