PM0:33
どうやら、品行方正を地で行くはずの生徒会長さんは、やんわりと犯罪スレスレな真似をしているようです。驚きですね、えぇ。
「……一応聞くけど、何でそんな事を?」
「小説で読んだのです。学校生活を謳歌するには、屋上でお弁当を食べなくては始まらない、と」
気持ちは分からんでもない。俺も高校に入った時、屋上の利用は全面禁止と聞いて何となく残念に思ったもんだ。
が、だからって鍵の複製までするかね。クソ真面目な事は確かだけど……この人、もしかしてちょっとズレてる?
いや、そもそもどっちだ? 世界がイカれちまう前からこうなのか、イカれちまったせいでこんな設定が付いちまったのか。
出来れば後者であってほしいけど、今は確かめようもない。とりあえず、現状を受け入れよう。
「ん、鍵の事は分かった。で、弁当の事だけど」
「はい、もう少しお待ちを。すぐに展開しますので」
そう、今現在俺の目の前で〝展開〟が進んでいる。
屋上の一角だ。遠足で使うようなピクニックシートの上に俺は座っている。
シートの大きさは大体3メートル四方。結構大きめなヤツだ。
その上にいるのは俺と生徒会長だけ。普通に考えれば、広すぎる。のだが……、
(足の踏み場がなくなってきたんだが……)
シートの上を埋め尽くすモノを前に、俺は若干胸やけのような感覚を覚え始めていた。
その正体を一言で言えば、重箱。黒塗りで金色の装飾が施された、お節料理とかにも使われそうな高級っぽいヤツだ。
さすがに重箱を見たのはこれが初めてじゃないが、明らかに段数がおかしい。普通は5段くらいだと思うんだが、これはもう既に20段分くらいを展開している。
屋上に来るまでの間、生徒会長がもっていた標準サイズの弁当に騙された。明らかに女子サイズって感じの可愛らしい弁当箱だったのに、なんで最初から屋上に重箱がスタンバってるんだ。
「なぁ生徒会長。一応聞きたいんだが」
「何でしょう?」
「さっき持ってた弁当箱は生徒会長が食べるのか?」
「はい。ですので、この重箱は全部三崎君に食べていただこうかと」
無理です、死にます。
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