AM11:37

 保健室へと向かう間、俺は緊張していた。


 休み時間は終わり、生徒たちの喧騒は消え去っている。授業を受けているであろう教室の前を通り抜けるのは、なんというか罪悪感のような感覚を覚えてしまう。


 サボってませんよ~? 俺は授業向かおうとしたのに、のほほん悪魔がもっともらしい事言って俺を保健室に送り込んでるだけですよ~? などと誰に宛てたものかすらも分からない言い訳を小声でぼやき続ける……こらそこ、ただの頭やべぇヤツじゃんとか言わない。


 さて、気を取り直そう。


 保健室は隣の校舎の1階の端にある。この校舎の1階は1年生の教室で固められていて、俺も1年前はこの辺りを毎日のようにうろついたものだ。


 けど、今となってはアウェイ感がやべぇ。この空間に俺の居場所なんてどこにもないような、そんな感じ。1年の時に移動教室で2年3年の教室の前を通り過ぎる事は何度もあったけど、それとは似て非なる感覚だ。


 基本的には教室はドアも窓も閉め切るものだが、1つだけ窓が空いてる教室がありやがった。こっち見んなよ、マジで見んなよ、と心の中で念仏のように唱えつつ、早足かつ出来る限りの無音で歩き抜ける。

 

 …………ああああ、窓際のヤツが早速気づきやがった2年生が歩いてる的な感じで指さすな周りのヤツに教えんな授業集中しろや1年のくせにいいいい!



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