AM10:26

『マックスは必死に手を伸ばす。短針は、まだ少し遠い。けれど、あと5分も経てば届くはずだ』


 いや、5分前から必死に手を伸ばしても時間の無駄だろ。その時間使って短針に近づく別の方法試せよマックス。名前的に何かしら能力とか使えるんじゃないのかお前。


『と、その時!! 彼方から、絶望の音が襲来する』


 お、何だ何だ、急展開か?


『あ、アレは……ロンギヌスの槍!?』


 ヤバそうなヤツ来たぞおい。


『ぶわっ! とマックスの額を流れては滴り落ちていく汗。今の彼に、アレに抗う術は1つたりともない』


 つまり、時計塔の時計部分にしがみついてるマックスと小野妹子。そこ目掛けて、なんかすげぇ槍が飛んできてて絶体絶命って事だな。


 まったくもってどういう話なのかが掴めないが、やけに勢いとツッコミどころのあるお話だな。


『マック、ス……これを……』


『オノノイモコが震える手を伸ばす。血塗れの手は、光り輝く一冊の本を握っていた』


『マックスも手を伸ばす。どうにか、本を受け取ることが出来た』


 お、こっちはこっちで強力なアイテムゲットか?


『これは……まさか、ネクロノミコン!?』


 思わず、自分のカバンに視線が行った。端っこだけが僅かに見える。


 別に光り輝いてはいない。そもそも同姓同名だけで、無関係だろう。


 けれど、万が一という事もある。ここから輝き出されても困るので、俺はカバンのチャックをしっかりと閉め直した。


『早く、それを……!』


『ああ! 任せとけ!』


『マックスはネクロノミコンを開き、記された古代文字を唱えながら彼方を見据える』


『超高速で向かってくるロンギヌスの槍に、真っ向から立ち向かう』


『ネクロノミコンよ、俺に力を貸せ! うぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!』


 ……熱い場面な事は分かったけど、それを針にしがみつきながらやってると考えたら随分とシュールな絵面だな。




 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る