AM10:24
御柳先生の静かで、けれど力強い、そして何より感情のこもったセリフが教室内を反響する。
そういや、御柳先生って放送部の顧問だっけか。普段から発声の練習とかしてるのかもしれない。
(いやいや、そんな事はどうでもいい。何でもいいから訳していかねぇと……!)
えぇと、あのロリコン野郎、だっけ。あのは『かの』だとして……やべぇ、後が全く続かねぇ。
つか古文の時代にロリコンの概念とかねぇだろ……いや、そうでもないのか。あの時代は10代前半の女の子を嫁にするとか普通にあるし、それもロリコンに数えられるのかもしれない。
で、マジで脳みそお花畑かよ、と。マジで、は日本語的に、本当に、だから『げに』になるか……よし、『げに脳みそお花畑かよ』でいいや、知るかもう。
『マックスは時計塔の長針にしがみつきながら悪態をつく』
ねぇどんな状況? さっきのセリフをなんで時計塔の針の上で叫んじゃってんの? ねぇマックス、教えてマジで。
つか、さっきから古文訳なんざさせてたまるか、みたいな意志を感じる単語ばっかなんだが? 御柳先生、ちょっとレベル高すぎっす。
『ちょっと、マックス……喋ってる暇あったら、早く助けてよ……!』
なんか女の子出てきたぞ。セリフだけだと少し分かりにくいが、ご丁寧にも御柳先生が声質を変えてるのですぐに分かった。
演技的に、大分苦しい状況に置かれているようだ。てか先生、可愛い声もイケるんすね。
いや、そんな事より訳さねぇと。『とく助けよ』と。……残り? もちろん分からん。
『くっ……待ってろ、オノノイモコ! 俺が行くまで耐えろ!』
……まさか『小野妹子』というワードにこれほどの安心感を覚える日が
来ようとは。けど困ったな、小野妹子は男のはずなんだが。
アレか、歴史上の人物の性別が入れ替わってる系のアレか。あんま好きじゃねぇんだよなそれ。全部女の子にすればよくね? じゃねぇんだよ。歴史舐めんな。
『短針が刺さった脇腹を押さえて、苦しそうに喘ぐオノノイモコ。滴る血が彼女の手を赤く染め上げる』
あぁ、短針に串刺しになっちゃってるのか、小野妹子。で、マックスは長針にしがみついて、針が進むのを利用して短針に近づこうと……って随分と気の長い救出方法だな。今何時何分なのか知らんけどよ。
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