PM0:26

 結局、逃げることは出来なかった。


「痛ぇ痛ぇ! もう逃げないから放せって!」

「修二はすぐに嘘をつくからね! 幼馴染を舐めてはダメなのだよ!」


 ちっ、お見通しか。面倒なヤツだ。


 半ば凛に引きずられるように手を引かれ、俺は教室に舞い戻る。遠目に見ても、クラスが浮足立っている。確かに何かしらの問題事が起きているようだ。


 けど、それって相当だよな? 湯川が喰われてもまったく動じてなかったような連中だぞ? 何が起きたらそんな事になるんだ。


 しかも、その何かはどうやら俺と関係があるらしい。もうアレだな。このイカれちゃった世界を満喫するために、俺にひたすらイベントを押し付けてきてる感じか。HAHAHA、笑えねぇ。


 確実にクラスに近づいていく俺は、戦々恐々と教室に飛び込んだ。もういい、どうにでもなれ。俺は逃げも隠れもしねぇぞ。


「三崎だ……三崎が、帰ってきた!」


 保手浜が言う。そんな英雄の帰還みたいなテンションで言われても困るんだが。


「もう遅いよ三崎君! 私達、ずっと待ってたんだからね!」

「まったく……困ったヤツだよ、君は」


 津島さんと湯川がそんな事を言う。え? 俺が悪いの? 


「いや、俺は先輩に言われて保健室で寝てただけで」

「言い訳は良いから! えっと、ご指名の通り、修二を連れてきたよ!」


 ご指名……? 凛がどこか得意げに言葉を投げたその先。


「ありがとう、風花さん。そして今朝ぶりね、三崎君」

「へ……?」


 生徒会長、天月奏が、凛とした佇まいでこちらを見ていた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る