第12話 動き出す歯車
謎が謎を呼んでいた。全くどうしていいかわからない。
(先輩はなんであんなものを持っているんだ?)
伊藤の話を聞けば何かわかると思っていたものが、かえってわけわからなくなっていた。
(とにかく先輩に会って話してみないことには何もわからない。今日はもう考えるのやめよう。)
そう自分に言い聞かせながらも、完全には考えることを止めるなんてできなかった。
何気なく拾ったものがとんでもないものと分かれば嫌でも考えてしまう。
あたりは完全に太陽が沈み暗闇に包まれ町が煌々と灯りをともす。
いつも見てる風景なのに今はそれがひどくぼやけて見える。
その中を俺は自転車を押しながら歩いていた。
「総くん。」
(もう一度伊藤とも話さないとな。)
「総くんってば!」
突然自分の肩に手が置かれたのを感じて振り返った。
「うわぁ!びっくりしたぁ、なんだ裕美子かよ。」
「どうしたのこんなとこで。先に家に帰ってるんじゃなかったの?」
「うぅん、、あぁ、ちょっと伊藤のとこに行ってた。裕美子は?」
目をそらしながら答えた。
「私は部活終わって、お母さんにお使いをたのまれてたからスーパーに寄った帰りだよ。それよりどうしたの浮かない顔してるよ? なにかあったの?」
「大丈夫だよ、大したことない。」
「そうは見えないけど、もしかして神代先輩?」
俺は目を見開いてとっさに裕美子の両肩をつかんで。問い詰めた。
「裕美子、お前見てたのか!」
「いきなり痛いよ、総くんやめて! 部活中プールから神社で二人が話してるのが見えただけだよ。」
それを聞いて一気に安心して力が抜けた。
俺は石の正体も気になるのはやまやまだが、それとは別に今回の一件に裕美子や家族を巻き込むわけにはいかないと考えていた。
石のこともそうだが、問題の中心にいると思えるのが何を考えてるのかわからない神代先輩だ。
もし俺との話の内容を他の第三者が聞いていたとなれば、その聞いていた人に神代先輩が何かしても何ら不思議じゃない。
現に俺にどういう方法で導き出したのか知らないが、俺のことを石を拾った本人と当たりをつけて呼び出している。
「そうか、ごめん。悪かったな、大丈夫か?」
「うん、ありがとう平気。私こそごめん。」
「いや、いいんだ。それより早く家に帰ろう。俺はお腹がすいて仕方がない。」
「そうだね、あのさ総くん。」
「なに?」
「あのね、今日お母さん達、町内会だからさ、一緒にご飯食べない?」
「いいよ。」
「ホントに!じゃあ後で着替えて家に行くね。」
「あぁ。」
今日は色んなことがありすぎてひどく疲れた。
「裕美子、少しコンビニに寄っていいか? 今、半額セールらしいから肉まんを買って帰りたい。」
「いいよ、総くん肉まん好きだもんね。」
そう言って裕美子は笑った。
その後、俺と裕美子は買った肉まんを頬張りながら家に向かった。
ーー その二人が家に向かう姿を一人の女が見ていた。
「やっぱりね。えぇ、そう、彼らが持ってる。恐らくは彼の友人が今管理してる。
彼が持ち帰ってる様子はない。反応がないもの。
そういえば例のもの、博士がそろそろ発見したころじゃない?
えぇ、えぇ、そう、ならそっちは任せるわ。じゃあ後のことはよろしく。」
女は持っていたスマホを閉じ一呼吸息を吐く。
「ふぅー、さぁてどうしたもんかな。」
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