第8話 生きるという意味って? 私編6

過積載による車高短状態になりながら、安全第一?に集荷先からターミナル迄の東京の狭い道を、ネズミばりにクネクネ忙しなくハンドルを操作させながら、途中人に遭遇したら殺っちまうかもと、頭の片隅に危険なアラームを讃え、そんなアラームに気付かない振りをしてなんとか二十分掛けてターミナルの入り口付近に到着し、何時もの光景であるターミナルから集荷車が溢れて、駐禁なんかクソ喰らえな、トラックの集団が列を成している最後尾に、それまた何時も通りにトラックを貼り付けた。


この何時もの光景が歪むことを、これからの私の人生が激変し、大激動を迎えるかもしれない、迎え入れるかもしれないイバラの道を、少し心の奥でぷるぷると震えながら、少しおののきながら、運転席から一点前をじっと見ながら妄想して、そんな心を解きほぐそうと心の準備運動をし、三十分後、ターミナルホームの荷捌き場に辿り着き、バイトの荷卸専門の受け子と一緒に、集荷荷物を捌いて、途中青木の野郎に押し付けられた配達外の配達荷物を、担当場所に紛れ込まして、荷物の高さが五メートルを有に超えてる、歩けるスペースが、ほぼ無い状態の雑踏?カオスフィールド?なホーム下の、ネズミが擦り抜けるくらいの脇スペースを抜け、このターミナルの主が居る支店長室に向かった‥


ここの支店長というのが、仙台から二年前にやってきた支店長で、私見かもしれないが、東北のイメージである寡黙て地味、真面目という想像を、全て裏切るオールバックのヤクザなお方で、通称【鬼の千田】という、気に入らないドライバーや、ライバルの管理職、営業マンを、ことごとく地獄に突き落としてきた、この人おそらく修羅の心を持った、何の誇張でもない、ほんまもんの鬼と言われる種族である。


いや、これ漫画ならいいけど、身近に居る場合、迷惑でしかないっす‥


何故鬼かと言われると、気に入らない奴、特に支店長に反抗的な輩、内向的なもじもじ君など、所謂イジメ対象を探し出し、トコトンイジメ倒して、奴隷にするのだ‥


やり方は営業ノルマ、配達ノルマとかなんでもいいのだが、人間の限界を越えるノルマを与え、与えたノルマは間違いなくこなせないのだが、これをこなせ無いという名目で、能無しのレッテルを貼る。

人間圧を掛けられ続けられると、大体ミスが起こるもので、その上、寝不足等キッカケがあれば大体普通に人は事故を起こす。


その事故の弁済をさせるという意味合いで、イジメターゲットに、会社に無限地獄のような負債を抱えさせ、逃げられない様にするのだ‥


普通に訴えてもいいのだが、ここは悪い意味で井の中の蛙状態、どんな酷い扱いを受けても、逃げられないと会社から信じ込まされてるもんだから、まずは自分の心を殺すことからイジメられるターゲットは始めてしまう‥

そうなると、考えること全てを辞め始め、所謂"奴隷気質"になるという寸法だ‥

まぁ睡眠削らせて、思考を途切れさせ、追い込みを掛けていうことを利かせる、モロ洗脳だよね‥まぢパないっす‥


一応、私は今までまだそんな追い込みを掛けられては来なかったが、今からお願い事を"鬼"にしなければならないので、十中八九、これから追い込みを掛けられるだろう‥

さも、いま私が想定している、追い込み宣言が来たら、まだ書いてないが、明日東京支社に退職届を出す予定だ‥


その覚悟が出来てしまうと、気持ちの加速が勢いづいているにも関わらず、何故か心が落ち着き、これから"鬼"と対峙するにも関わらず、冷静になれていた‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


と思って、支店長室の扉を開け"鬼"を私が見たその直後、支店長と目があった瞬間、お猿もびっくりな、

「てめぇ、何勝手にオリェの部屋に入ってんだ、えぇ度胸だのぅ」

っと、支店長はヤクザ顔負けのセリフを吐き、私はそのセリフを聞いた瞬間、


"あぁ、肉食動物に殺られる草食動物の気持ちってこんな気持ちなんだろうな‥"

と、薄っすらとした感覚と一緒に、私の意識は真っ白に飛んでしまっていた‥‥

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る