その後、食事を適当な店で済ましながら話をする。



「冒険者ってのはな、誰でもなることが出来るが冒険者証の発行に手数料がいることと、どんな依頼を受ける際も最初に契約金が必要になるんだよ」



「冒険者証の料金はなんとなくわかるんだけど、どうして契約金なんているの?」



「一応依頼を成功させたら報酬と別で最初に払った契約金も戻ってくるんだけど、依頼って事は誰かが必要だから出しているもんだろ? 中途半端な気持ちの者が受けたり、自分にそぐわない依頼を受けないようにって措置だな。 等級が高い依頼ほど契約金は高いし失敗すると戻ってこないから、気をつけて依頼を選ぶ必要があるんだよ」





  冒険者証を作るためには金貨2枚が必要である。初期投資としては多少かかるものの、一般的な生活をしているものならば十分支払える金額ではある。今後使い続けるものであり、身分証明も出来るため決して高くない。が、安くもないため日々の生活が厳しいものからすれば十分大金である。




「ミーシャは今どんな魔法使えるんだ?」



「結構いろいろと出来るようになったよ? 得意なのは水属性だけどある程度ならどの属性でも!」



「回復魔法は?」



「大きな傷はまだ直したことないからわからないけど、応急処置ぐらいなら大丈夫かな?」




 なかなか優秀だな。俺は土属性が得意だが、魔力量的にあまり魔法は回数を打てない。あと、回復魔法も出来るようになったものの、かすり傷程度を塞ぐぐらいで、それ以上になると全く効果があるのかわからない程弱く、火属性については発動すらしない。




  魔法には向き不向きもあり、ミーシャのように属性を関係なく使える者もいたら、ジンのように全く使えない属性があったりもする。魔力を魔法に変換しているので本来なら属性など関係なく使えてもおかしくないのだが、こればかりは相性のようなものである。




「魔法ってさ、魔力の使い方さえ分かれば想像の力と魔力の量によって色々な魔法が使えるもんだろ? 詠唱だったり魔法書を読むことによって魔法個々の概念? 構造? を理解したことになって魔法の具現化が何もしないよりも発動しやすくなるだろ?」



 そういってジンは手の平を上に向けながらミーシャの前に持ってくる。


 手の平からは魔方陣が浮かび上がり、その少し上に砂の塊ができあり、そして崩れる。



「でも、こんな風に簡単に魔力を流すだけでも魔法は発動するくせに使えないのがあるってのがわからねぇんだよな」



「お兄ちゃんにはきっと想像力が足りてないんだよ! もっとこんな風にしたい! こんな魔法使えたらって思いながら魔力を使えばいいんだよ!」




 ミーシャもジンのように手の平を上に向けると魔方陣が現れ、少量の水が発生させ、クルクルと指先を動かすことによって、弧を描くように動き出し、指を止める水は氷として固まる。それをミーシャは自身の方に向けパクリと口に含み「ん~!」と唸りを上げる。




「結局魔法使う時って動きながらじゃ安定しないから後衛になるし、誰かと一緒に動く方がいいしな」



「威力の高い魔法の時はそうだね~、ある程度なら問題ないけど魔力を貯めるのにも集中力が必要だからね~、下手に動きながらじゃ発動しなかったり、魔力の消費量に比べて外に逃げていくから効果が低くなるから私は苦手かな~」





 ミーシャは結局のところ俺と同じ長さほどしかない短剣を購入して満足そうにしていた。


 なんでも小ぶりで可愛いとのこと。



 可愛さなんて関係なく実用性で選んで欲しいものなのだが。



「……よし! お兄ちゃんまだ元気だよね?」


「まだ買い物する気か? これ以上俺の財布をいじめられても困るんだけど」




  余裕がないことはないが、このペースで使われてしまうとしばらく節約生活を強いられてしまうので、せめて今日の所は許して欲しい。




「買い物はもういいの! 一旦荷物置きに帰ろうと思うんだけど、昔よく遊んだ広場覚えてる? 」



「あ~、家の近くのところか? あそこまだあるのか?」




  両親ともよくいっていたが、魔法の練習や、ちょっとした遊び場としてよくミーシャと過ごした場所である。



  周囲の子もよく使っていたが、古い建物が壊され新しい建物に変わるのと同じで開けた場所には少しいかなかっただけでも何か知らないものが出来ていてもおかしくない。



  帰ってきた時はそこに繋がる道を歩いていなかったため分かっていなかったが、素直になくなっていたと思っていた。





「そこそこ。 あそこにね、荷物置いた後……具体的には1時間後ぐらいに集合!」



「別にいいけど何かするのか?」



「せっかくだからちょっと対決! せっかく買って貰った服とかもお披露目したいし!」



「対決って……そもそも服は散々店で見ただろ?」





 ミーシャ自身の運動能力なんて昔と同じなら、正直いって負ける気は一切しない。今なら魔法がある程度使えるようになってるとしても最初に不意打ちを食らわないかぎり恐らく当たることはない。



 魔法を発動するためには魔力を貯める時間と放つ位置を定めないといけないが、初動で距離さえ詰めてしまえば圧倒的に俺の方が身体能力は高いはずだ。



「それになんで1時間もあとなんだよ、置いたらさっさと行けば良いじゃねぇか」



「お兄ちゃん、女の子は用意するのに時間がかかるものなんだよ?」



 人差し指をジンの顔の前にもってきてミーシャは語る



「はいはい、俺がわるかったよ、なら帰ったら一時間後な」



「うん!」




   そういって帰宅すると荷物を自室まで運ばせておきながら追い出すように部屋にこもる。ジンも1時間ほどすることがないため自身の部屋で自分の荷物整理。両親は子供2人が外に出ていると言うことで自分達もといって別行動したため、まだ帰ってきていない。






 長くてもあと2日ぐらいかな、あまり長居してしまうと冒険者としての感覚が鈍ってしまう。鈍ってしまうということは自分から危険を増やすということで、出来る事なら避けたい。今日の夜にでも両親が帰ってきたら話そう。ミーシャともまたしばらくお別れになるだろう。下手をすれば同じく3~4年ほど。



 15才ということは学院に入れる年だからだ。学院だってこの街の学院なら良いが俺の時と同じで別国の割と有名な学院に入れたがるんじゃないかな。



 両親は俺たちに好きな風に生きて欲しいと思ってると同時に、少しでも可能性の広がる場所にいってほしがる。経験談。



 そして、別の国になると寮暮らしになるだろうから俺が実家に帰ってきたとしても卒業まではミーシャの方が戻ってこないだろう。



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