「本来なら、魔力を水晶に込めて頂くのが、一番早い方法ではあるのですが、できそうでしょうか?」



「体の中にある、魔力ってやつを水晶に向けてみたらいいんですよね?」


 内なる力が目覚める!


 とかいう展開だったら超絶アツイ




「そうですね、魔力とは目に見えるようなものでもなく、魔法に変換することによって初めて、姿形、効果を現すものだと考えて頂ければ良いと思います。想像を具現化するという表現が近いかもしれません。試しに、私の魔力に触れてみましょうか。説明しました通り、魔法として変換させない限り、なんの害にもなりませんので、安心して下さい」




  サーモスがそう言うと、手をゆっくりと振るう。タケルの顔の前を通るように振るった手であったが、通過するその時、生暖かい感覚に襲われる。


  それは生暖かくて、ねっとりとした感覚が顔を覆う。かざし終わると同時に、少し鳥肌がたつ。





「今のが魔力だけを放出してみたものです。あれだけでは何の意味も無く、ただ魔力を消費するだけなので、こういった場以外でやることはないでしょう。如何でしたか?」


「なんか生暖かくて、ねっとりとした感覚でした。てか、わざわざ顔に向けてする必要あったんですか?鳥肌立ちましたよ!」


「いやー、ちょっとしたおふざけも大切かと思いまして。お気に召しませんでした?」




  悪気もなく、相変わらず陽気に返事を返してくる。しっかりとしている部分もあるが、この辺りは、やっぱり同世代だなと思った。




「突然だったんで驚きましたよ!でも、今のが魔力なんですね。ちょっと試しにやってみてもいいですか?」



「私も楽しみにしております」



 水晶に対して、両手を向ける。




  魔力、魔法は妄想の具現化のようなものだとい言っていたなら思い出せ、これまで妄想してきたことを。目を閉じ、集中する。





 魔法を手から出すイメージを。


 不思議な力を手から放出するイメージを。


 体の周りにあるかもしれない魔力を手に集めることを。


 血の流れに、魔力が混じっているような感覚を。


 両手を合わせず、少し間をあけることによってそこに何らかの力が集まるような、そんなイメージを!







 今、この世界ならそれが叶う


 いっそのこと全属性と相性があってもいいだろ


 それぐらいこっちの世界に召喚されたんだからあり得るだろ


 俺の時代が、今日、この日、この時間からはじまる!




 目をいっきに開け、手に向けて何かでるイメージをしながら全力で叫ぶ




「うぉおおおおおおおおおおおおぉおおぉ!!!」




 突然のことで、サーモスはびっくりしているようだが、今はそんなこと関係ない。


 ついに物語が開始されるのだ。
















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  サーモスは、机の上に置いていたもう一つのものである木箱から、ロウソクとマッチに針、そして紙を取り出した後、ロウソクに火をつけ、針を消毒し、小さな紙と一緒に渡してくる。





「では、こちらの針で少し血を出して頂いて、この紙に数滴ばかり血を垂らしてください。そうすれば、12時間後には完全に色が変わっておりますので、楽しみにしておいてください」




「ぁ・・わかりました、ありがとうございます・・」




  チクっと針をさして血を出す。指の先の方を軽く刺してみたが予想以上に血が出なかったため、予想してたより深く刺さないといけなかったのが痛かったが、言われたとおり、紙の上に垂らす。


 少しばかり遠い目をしながら。






 --------------------------------------




 数分前


「うぉおおおおおおおおおおおおぉおおぉ!!!」




 この叫びから、数秒。


 水晶に変化が現れない。




 もう少し待ってみても現れない。


「おりゃぁあああああ!」


 もう一度、叫びながら力のようなものを込めるようにする。




 水晶に変化が現れない。


 せめて光っててさえいてくれたら光属性だったんだろうがそうでもない。




 鼓動が早くなる。


 あれ?俺魔法使えないんじゃね?魔力って必ずあるんだよな?


 異世界にこれたのに、魔法も使えないとかどうしたらいいの?




 不安な気持ちから横にいたはずのサムールさんを見てみる






 笑うのを全力で堪えていやがった。




「ちょ!サーモスさん・・・これどうしたらいいんですか!なんの反応もしてくれないんですけど!俺、魔法の才能ないんですか!?」



「いやー、すみません!まさか叫んでされるとは思ってませんでしたので、笑ってしまって申し訳ないです。簡単な話です、タケルさんは魔法使ったことありませんよね?そのため魔力を出す感覚がまだわかっていないんですよ」



「でも魔力って妄想して出すんじゃないんですか?」




「それに近い感覚ではありますが、自身でも理解していない力をいきなり出して見ろと言われても、普通なら無理ではないでしょうか?例えば、しっぽのない私たち人間に突然しっぽが生えてきたとします。その場合、しっぽを動かせと言われてもできると思いますか?」




 一旦呼吸を置き、続けて


「中には、直感的にできるような方いらっしゃるでしょうが、そういった方はごく一部です。魔法に関しても同じで、魔力自体はこの村の皆さんにも備わっていますが、森の中にあるこの村では、その使い方を学ぶ環境がないのです」




「でもサーモスさんは、俺に教えてくれてるじゃないですか? どうして他の村の人達に教えてあげないんですか?」




「私は、魔法の使い方でなく、魔法に関わる知識と魔力の感覚を教えているだけですので、お間違いないようお願いします。魔法に関しましては、教会から、関係者以外に教えることを禁止されているのです」




「魔力は誰にでも使えるなら、別に教えてあげてもいいと思うんですが」




「そのようにしてあげれたら一番かもしれませんね。街の学校に通う子たちは、みな魔法を使うことができます。それは、先ほど説明したように、学ぶ場所があるからです。そして、私たちは学校ではありません。教会に務めている者は、教会の名前を大事にしなければなりません。その者が学校の仕事を奪うにあたいする行為をすることは、学校側から不信を買う恐れがあります。我々は信仰の対象であらなければいけないのです」




 人には人の、会社には会社の、組織には組織の事情があるということだ。





「そうすると俺はどうしたらいいんですか?」




「少し意地悪をしてしまいましたね、魔力などについては、私以外からか、街に行って頂いて学校に通ってみると良いのではないでしょうか。タケルさんはまだ若いようですので」




 相手の方が知識があるため、オモチャにされてしまってる感がある。


 いつか見返してやる。




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 気合いを入れて望んだ結果、ただただ恥ずかしい思いをしただけであったのだ。




「それぐらいで大丈夫です、回復魔法をかけますので手をこちらにどうぞ」




  血の出ている手をサーモスの方に突き出す。ついに魔法を見ることに。しかもそれが、自身で傷つけた手を癒やして貰う回復魔法になるとは予想外である。ムウラさんも魔法を使えると言っていたので先に見せて貰ってたらよかった。




「では失礼して、【かの者に癒やしを与えたまえ】」




 サーモスの手が、血の出ている俺の手に触れないぐらいの距離にくると強くない光が発生する。




  チクチクしていた指の痛みが消えていき、なんとなく痒くなるような、そんな感じ


 光が収まったので指を見てみると、綺麗な傷口の無い指。


 魔法ってやっぱりすげぇ




「今のって何属性の魔法なんですか!」




「今のは光属性の魔法ですよ。興味を持って下さったのなら、よければ教会に加入して学ばれますか?教会に務める者になら先ほどのような癒やしの魔法をお教えすることができますよ」




 サーモルはニコニコっと絵我をでこちらに問いかけてくる。




  教えることはできない、学ぶ場所はない、そういってたのはこの時の為かと思うタイミングで勧誘してきたのである。なんとなく裏があるのだろうなと感じてしまう。

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