想像お仕事インタビュー

浅野新

第1話

夢がある。まあ、そうですかねぇ。意外と普通の会社に勤めるのと変わりませんよ。私、サラリーマンから転身しましたからよく分かるんです。はい、確かにこの業界では珍しい方ですけどね。


ここは序列はかなり厳しい社会です。そこのところは日本でもよほど日本社会ですよ。縦社会でムラ社会。長いものには巻かれないとメンバーになってもはじき出されますし。コンマスが一番。巨匠レベルは別ですが、実力と名のある指揮者と言えど、コンマスが従わないとオケ全体も従いません。

私がサラリーマン時代にコンサートを聴きに行った時に、あれって思いました。一曲終わると指揮者がオケを立たせて観客から拍手を受けるじゃないですか。メンバーがすぐに立ち上がらないんですよ。で、よく見てたらコンマスが立ち上がると他のメンバーも即座に立つ。座る時もコンマスが最初。指揮者の合図は無視。その時のオーケストラは名のある一流どころ。一方指揮者は客演で、人気、実力はあるものの若手。気付いてはいけないパワーバランスを知ってしまった気がしました。まあそこまで露骨なオケは少ないですがね。


つまり、そういうことなんです。指揮者がお客さんに人気があっても若いってだけで上から目線のコンマスはいっぱいいます。自分の方がキャリアが長かったり、年上だったり、名のあるオーケストラにいるとテキメンですね。客演指揮のコンサート、あるじゃないですか。あれで指揮者は人気も実力もあるが若い人の場合、よく聴いておいてください。想像以上に出来が悪かった時は、単に練習不足か、オケとうまくやれなかったんだろうと思いますね。あってはならないことなんですけどね、お客さんからお金もらってるんですから。それにお客さんにだって、裏事情は知らなくても伝わります。「あれ、今回は思ったより下手だった」って。理由はそんなとこです。


思ったよりこの業界大変そうですか?人間関係大事なのはどこでも一緒ですよ。

私はまだまだ。おかげさまでヴィオラで二番手をさせて頂いてますが主席が絶対。彼の邪魔をせず悪目立ちせずオケ全体の調和を乱さないよう努める。そうして虎視眈々と主席ヴィオラの座を狙う(笑)。


いや、楽しくやってます。苦痛はないですよ、好きな事させて頂いてますし。

基本はサラリーマン時代と変わりませんから!



__プロオーケストラ所属

ヴィオラやってます



※筆者のようなクラシックど初心者向けのここだけ本当の用語解説(Wikiwandより一部抜粋):コンマス:コンサートマスターの略称。 オーケストラの演奏をとりまとめる職をいい、一般には第1ヴァイオリンの首席奏者がこの職を担う。男性を指す。女性の場合はコンサートミストレス。

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