第4話 3度目の目覚め

 ……きて、あなた!


 はっ、と私はベッドから飛び起きた。

 額が汗でぐっちょりだ。


「ここは? 私は、生きてるのか?」


 妻がナイトキャップを被りながら、枕元のメガネをかけた。眉間にシワを寄せ、一つ大きく、ふわ〜と息を吐く。


「あなた、大丈夫? カプセルが、とか何とか言ってかなりうなされてたみたいだけど」


 え?

 ここはどこだ?

 薄明るい温暖色に照らされたのは、ベッドの上に横たわる妻と私。私もベッドの上にいる。

 ここは寝室だ、間違いない。

 時計を見た、針は1時を指している。辺りは凍りついたように音がない、時は今まさに、深夜だ。


 夢か……。

 そうか、保険だ。あの生命保険のせいでこんな夢を見ていたのだ。

 本当に良かった、ダストボックスに入れられずに済んだ。


「なあ、30年後って俺たち元気にしてるかな?」

「はあ? 何言ってるの、おやすみー」


 そう言って妻は私に背中を向けた。


 30年後は分からない。

 生きているのか、死んでいるのか、はたまた日本は存続しているのか。

 それでも私たちは進むしかない、ただひたすら信じて時が刻まれるのを待つしかない。


 横にはすやすやと寝息を立てる娘、百合。まだ2か月。

 何としても楽しい老後を送るぞ、そう私は決意を新たにしたのだった。

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