第38話 覚えている①
「はーい。感動的なミュージカルの次はルビーちゃんのライブでーす。みんなーおまたせ〜」
体育館がルビちゃんのライブで盛り上がっている。
そんな中、俺は一人で控え室にいた。
ドクンドクンと自分の心臓が大きく鼓動を打っているのが分かる。
桜井さんはあの告白は演技だと思っているだろうが、それでも自分にとっては違っていたから…。
コンコンコン。
扉をノックして勇者役をやっていた俳優の人が入って来た。
「いやー。君のさっきの演技最高だったよ」
「…ありがとうございます」
「特に最期の方の告白…あれはもしかして演技じゃない?」
「………!?」
「やっぱりそうだったんだ」
さすがと言うべきか…最期のが演技じゃなく本当の気持ちだっていうことを気づいているなんて、
「その感じだとまだ告白してないだろ。早く告白して楽になっちゃいなよ」
すごい。告白してないのもわかるなんて。だが、
「…怖いんですよ。僕が告白したせいで、今の楽しく話したり、一緒にみんなで旅行に行ったりするこの関係が壊れてしまうのが」
「…なるほど。君は自分のために告白をしないんだね」
「違います!僕はただ、この関係を…」
「この関係のままでいたいなんて君がそう思っているだけだろう。もし。もし、相手が君の告白を待っているのなら君がしていることは相手の為じゃない自分の為だ」
……っ。確かにそうだ。
「君が動かなければいけないんじゃないかな。君は男だろ。君が好きな女の子から告白させるなんていうのはみっともないと私は思うよ」
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