第8話

そして話は今に至る。

全てを思い出した…。

「ねぇ紘一くん?この訳を話してくれるかな?」

八女が柔らかくかつ詰めるように聞いてくる。

八女ってこんなに怖いやつだったかな……。

まあこの状況を考えれば怒るのも仕方ないとは思う。

でも、それにしても怒り方がいつもより、こう、圧があって深いのだ…。

「とりあえず私達の前から姿を消した理由を話してくれる?」

依然として強張った笑顔で八女は聞いてくる。

もともと強く詰め寄ってきてはいたが、今はその姿が更に大きくなったようにも感じる。

こんな状態の八女にホントのことを言えるw…

「気を使ったりしなくていいから本当のことを言いなさい?いいわね?」

僕の思考を読んでいるのか……。

まさか…ね?

とりあえず嘘をつ「早く喋ってくれない?」

ひいっ!

八女はまた語気を強める。

こいつ、俺の知らない間に怖くなってる…。

俺の知ってる八女はもっと優しくてニコニコしてたんだけどなぁ…。

まさか!ヤンデレ?!

まあどーでもいいのだが……。

「単刀直入に言うよ…八女。僕は死にたいんだ」

本心だ。

例え八女がなんと言おうが知ったこっちゃない。

が、

言ってやったぜ。

内心はこう思っていた。

精神が錯乱していることが自分でもわかる。

自分が変わっていると、変わりきっていると感じる。

まあ本心と心の中は別の話だよな?知らんけど。

八女はなんとも言えない呆気にとられた表情でこちらを見ているがスルーだ。

とりあえず帰ってまた考えよう

僕は席を立った。

「………よ…待ってよ!」

八女の声が部屋に響く

「なんで!そんなことするの…なんで…なんで私に相談してくれないの!」

あー出たよ…私あなたにとって特別ですから宣言。

言う人からしたらそんなつもりはないだろう。

それでも聞く人からすればそう言っているのと同じように聞こえる。

相談したって解決しないと思っているんじゃない相談したら嫌われると思ってるわけでもない。

でも相談する元気も勇気もこっちにはないのだ第一相談が根本の解決にはならないじゃないか、相談相談相談相談相談相談相談相談相談相談相談相談何回も聞いた。

うぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!

そのたびに思う。

そのたびに感じた。

相談も大切だけど相手の心を考えろ☆?

それと同時に慰めるでも宥めるでも無くかつ聞くだけでも無く…。

兎に角そっとしておいて欲しいことだってある。

そこら辺はなった人でも相手の気持ちの詳しい部分は分からないだろうし、自分の切り抜けた方法が相手にとっても正しいとは限らない。

そんな難しいものなのだ。

多分………うん、多分。

「八女、お前に関係があるかどうかは別として俺は止まるつもりはないしこれからも自殺は。」

僕は振り返ることなく出口の方へと歩いていく。

後ろで八女は何をしていたのかなんて知らない。

でも何か言おうとしていた

いや、ドアの閉まる時に何か言っていたのかもしれない。

でもその声はドアの閉まる音と冷たい鉄の壁に阻まれて僕には届かなかった。


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