例えが分かりづらい17話
「……あんた……それ…………なに?」
後ろからカナリアちゃんの声が聞こえる。
俺は急いで壊れたショットガンを拾い上げる。
「えっと、これは、その、直そうと思ってたショットガンで…………」
そうして思い出す、リボルバーも壊れていたという事実。
「……代理品は……?」
「…………ないです……」
カナリアちゃんから盛大なため息をつかれたのを感じた。
土下座、と頭に過ぎるがそれはクエストが終わってからにしよう。
俺は速攻でアイテムストレージにショットガンを戻し、ストレージを見る。
「あ」
俺は思い出したかのようにあるものを取り出す。
それは、記念すべき初クエストで使われた【初心者用の拳銃】
弾はブレるが、少し軽いため近距離でも使える。
よくあるスライドアクション式のもので、装填数は9発。
まぁ、普通な拳銃だ
しかし、ゲームでの威力はゴミカスであるが、
「あんたそれ……初心者用よね……」
俺は苦笑いをしながらカナリアちゃんを見ると、カナリアちゃんは頭を押さえていた。
そしてその後ろには、武器を持ったキャントちゃんとウルトちゃんがいる。
キャントちゃんは子盾に短槍。
ウルトちゃんは…………すないぱーらいふる?
俺はいきなりあんなウルトちゃんの身長に迫るくらいのデカブツを見せられて、幼児に戻ってしまうところだった。
「あんたには、今日はウルトに色々と教えてもらう予定だったんだけど……」
「いや使えるけどさぁ……」
ボソッと呟いた言葉を、カナリアちゃんは聞き逃さなかったようで、
「使えるの?!」
「え? あ、いや、えっと……」
正確には、前世で、なんだけど。
俺は何度も見たけど初めて見たスナイパーライフルを見て、
「あれ、誰作ったの?」
「……【女傑衆】の専属のお弟子さん」
つまり、知らない人なのか……。
俺は前世の経験を思い出して、複雑な気持ちになりながらも、
「教えれると思うよ」
「ほんと!」
カナリアちゃんは振り返ってなにか言おうとしたが、
「あんた、ほんとにその武器でクエスト受けるなら、邪魔しないようにしてね」
俺の方を向き直し、厳しく言われた。
いやほんと、申し訳ないっす……。
俺はカナリアちゃんが二人を呼んでいる後ろ姿に、土下座をかまそうか今一度考えさせられた。
『知らぬ武器を持つな。
それは目の前が真っ暗な事と似たようなものだ』
「よろしく」
カナリアちゃんがウルトちゃんは俺に、キャントちゃんはカナリアちゃんに教えてもらうということになったけど、
「おっきいねー」
「どうしたのよ、こっち見て」
なんかキャントちゃんとカナリアちゃんも一緒にいる。
「なんでお二人はここに?」
「だって、せっかく諏訪さんから教えてもらうのに、別々だなんて面白くないなー、って」
「私も、今日はあなたから教わる身だから、いるの」
俺は愛想笑いで済ましながらも、説明を始めないと終わらないため、
「じゃ、スナイパーライフルの説明するよ」
俺はウルトちゃんからスナイパーライフルを借りて、しっかりと見る。
凡そ1mくらいの全長。
黒くしっかりとした作りのフォルム。
そして何より、この引き金の上部分にある取っ手。
「SVR-10……」
「……正解」
ウルトちゃんは、名前を言っていないのに何故わかる? という表情でこちらを見る。
「別に難しくないよ。
ボルトアクションだったらそこら辺かな?って思っただけ」
俺はマガジンを取り出し、弾が入っていないことを確認する。
マガジンを再装填し、引き金の上の取手を手前に引く。
そして、俺はその場にしゃがんでスコープを除きこむ。
4倍……。
俺は引き金を引く。
カシャン! という音が鳴る。
「うん、いい銃だけど、虚式かな?」
「そう」
俺はなんでこんなものを作ったのかと製作者の顔を思い浮かべながら、ウルトちゃんに返す。
「二人にも分かりやすく話すと、この武器は所謂狙撃銃、ってものだ」
「狙撃銃、ってすっごい遠くから狙う人?」
そうそう、とキャントちゃんの言葉に頷く。
「それで本当だったら、このじゅうはあ500メートルくらい離れていても狙える」
「武器の最大射程は750メートル。
しかもそれはクエスト中一発に限られた話よ。
それ以外で普通に撃てる最長距離は、確か400メートル?」
カナリアちゃんがうろ覚えなのであろう知識を教えてくれる。
俺はその言葉を聞いて納得する。
確かに、遠距離からちまちま撃ってればクリアできるならヌルゲーだろう。
「多分その最長射程に合わせてこの武器はカスタマイズされていて、見たところこの武器は200~400メートルを狙えるように改造されている」
サイレンサーが着いていることから、300メートルくらいからちまちま撃っていく、というのが武器を見て思った。
「だから、練習方法としては、【修練場】で300メートル位先に動く的を用意して、撃ち抜く練習をした方がいい」
俺はウルトちゃんがしっかり聞いているのを確認してから、付け加えて、
「でも、スナイパーライフルの使い方は、相手を撃つことだけじゃないよ」
え?
この場にいるみんなが何を言っているのか、というふうに見てくる。
「例えば、スナイパーライフルが相手に居る!
そう思ったら、どう動く?」
俺はカナリアちゃんに視線をやり、答えるようにする。
「そりゃ、スナイパーライフルから狙えないところに、かつもし倒さなきゃ行けないと感じたら倒しに行くわ」
「そう、気にするんだよ」
「気にするのが、どういうこと?」
キャントちゃんもカナリアちゃんもよく分かっていないようだが、話を続ける。
「相手、スナイパーライフルいるのか、じゃあ……なんて思考になっていたら、ウルトちゃんはそんな様子を把握したら、どうする?」
「…………倒されないようにする?」
「うん、そういうのもありだね。
でも、人によってはその裏をかいて倒してやる。
もしかしたら仲間にそれを伝えて、注意が散漫になっている所を倒す、なんてのもある」
「確かに……スナイパーライフルっているだけで強いかも……」
カナリアちゃんがハッとする。
「そう、スナイパーライフルは、目立ったり、目立たなかったり、倒したり、囮になったり、一人いるだけでだいぶ違う戦略が取れる」
キャントちゃんは難しい顔をしている。
「例えばさ、クラスで色んなことが得意な人がいて、色々なことが出来るけど、それは学校が違ったら校則で出来なくなるかもしれないよね?
それは学校がいろんなことを出来るようにしてくれてるから、できるんだよ」
キャントちゃんは、細かくはわからなかったが、何となくわかったというような様子で頷く。
ま、みんな幼いから難しいか。
俺はウルトちゃんの方を向いて、
「これだけは覚えておいて。
まず優先することは、
見える状況を、しっかり把握する。
マップを利用する。
近づかれて時の対処。
これを覚えれば、君はきっといるだけで頼もしいと思われるよ」
と言ったが、難しいだろう。
「みんなを見て、サポートするつもりでいればいいよ。
そうすると、いつの間にかそれが楽しくなってくるからね」
スナイパーライフルは、扱った回数こそ少ないが、助けられた回数は多い。
俺はそんな前世のあったことの無い人の記憶に思いを馳せながら、とりあえずやるだけやってみればいいよ、ぶっつけ本番でもどうにかなるよ、なんて言った。
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