第10話 まだ起きてるのか

 女性が苦手。


 結論だけ言うとこの上ない程簡単な話なのだが、いざ向き合ってみるとそんなに簡単ではない。


 一種のトラウマみたいなものだろうか。


 兎も角、そういったトラウマを刺激されると俺はこんな気分になる。


 どうしようもなく他人と関わりたくなくなる。


 こんな気分の時は家族や友人であっても関わりたくない。


 その日、俺は家に帰ってからもほとんどの時間を一人で過ごした。


 そういえば、こころと話していない日はいつ以来だろうか。


 …ま、今はそんなことどうでもいいか。


 ***


 学校でお兄ちゃんと別れてから、顔を合わせても会話ができない。


 お兄ちゃんと話さないまま一日が終わるのはいつ以来だろう。


 今までもお兄ちゃんがこういう風になっちゃうことは少なからずあった。


 でも何だかんだありながらも最終的にはお兄ちゃんは立ち直っていつもみたいに私に付き合ってくれる。


 私が知ってるお兄ちゃんは決して弱くなんかない。


 お兄ちゃんが抱えているトラウマの詳しいことは私にもわからないけど、今回もお兄ちゃんはきっと立ち直る。


 …でも、なんでかな。


 今回はいつもよりも辛そうに見える。


 久しぶりに自分のベッドで眠るけど、一人で眠るのって思ったよりも寒いんだね。


 お兄ちゃん…。


 ***


「…はっ」


 どうやら知らない間に眠っていたようだ。


 部屋が完全に真っ暗になっている。


「今、何時だ…」


 俺は手探りで机の上のスマホを探し、時間を確認してみた。


「うわ、2時とか…。飯も風呂もまだだし」


 まだ頭がぼんやりとしている。


「あぁ、くそっ…」


 気分が悪かったのでもうこのまま寝てしまおうかと思ったが、体が空腹に耐えかねていた。


「とりあえず飯食うか…。なんかあるかな…」


 俺は気だるげに暗いままの部屋を後にした。


「…ん?」


 リビングの方から何か音が聞こえる。


 さすがにもうみんな寝ているはずだが。


「誰かまだ起きてるのか?」


 明かりはついていない。


 電気が消えた部屋でテレビでも見ているんだろうか。


 俺は何となく誰が起きているのか気にしながらもリビングに入った。


「…こころ?」

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