第4話 俺それ初耳なんだけど
「今更なんだけどさ」
「うん」
昼休み。
いつものようにこころと二人で昼飯を食べながら俺はこころに話しかける。
「仮に、毎日のように告白してくるお前を俺が受け入れたとしよう」
「えっ!?受け入れてくれるの!?」
「最後まで聞け。仮にそうなったとして、周りにはどう説明するんだ?ほら、よく物語の中では兄弟の恋愛って咎められたりするじゃん」
「大丈夫!お母さんとお父さんから許可は貰ってるから!」
「待って俺それ初耳なんだけど」
「前に相談したら『恋愛は自由にするものだ。むしろあんまり知らない相手よりもずっと楽だからいいよ』って」
「……」
なんてこった。
俺の知らないところで退路が一つ絶たれていたとは。
「友達とかはそこまで親しい間柄じゃないし、お兄ちゃんと付き合い始めても別に話さなくていいかなって」
「俺はどうすればいいんだ…?」
「お兄ちゃんだってそんなに仲いい人いないでしょ?私知ってるんだよ。お兄ちゃんがアプリでやりとりするのは私とお母さんたちくらいだって」
「馬鹿にするなよ。俺にだって仲いい奴くらいいるわ」
「それ、私も知ってる南雲君でしょ。直接会って遊ぶのせいぜい二、三ヵ月に一回じゃん。しかもその時は私もいっしょだし。誘うのはいつもお兄ちゃんからだし。南雲君から遊びに誘われたこと全然無いのも私知ってるよ」
「……」
「というわけで、お兄ちゃんが心配してることはなんとかなってるから大丈夫!さぁお兄ちゃん!今日こそ私のことを彼女にしてもらうからね!」
「今日もやるの…?」
「やる!はいこれ!」
そういってこころはいつものように手紙を渡してきた。
「えーと…?」
「今読んじゃダメ!ちゃんと一人で読んで!」
「これ書いたのお前だろうが。ってかもう直接言えばいいだろうに、何にこだわっているんだよ…」
「彼氏彼女の関係の始まりはそういうのがいいの!何となく『じゃあ付き合う?』『いいよ』みたいな軽いノリじゃダメなの!」
「…まぁ、軽いノリから始まる恋愛がなんかヤダって気持ちはわからんでもないけど」
「でしょ?じゃあそういうことで、また放課後にね。バイバイお兄ちゃん」
こころはそう言って、手紙を押し付け戻っていった。
…しかし、本当に参ったな。
まさか両親から許可が下りていたとは。
いよいよ俺が受け入れたら兄妹改め恋人の関係になってしまうのか。
「……どうするかな」
少し考え事をして、俺も自分の教室へと戻っていくのだった。
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