第2話

激しいブレーキ音と、耳障りな衝突音。

そして漂ってくる鼻をつくような血の匂い。

よくある人身事故。更に追突した車は、逃げる様に走り去って行く。


残されたのは道路に横たわる、1人の青年。

血溜まりの中、ようやく生きている様な状態だった。


血の匂いに混じった死臭……

もう助からない事が伺える。


するとソコに1人の小柄の影がゆっくりと地上へと降り立ち、青年の元へと近付いた。











「やれやれ、轢き逃げか……随分と酷い事をするもんだ」











ポツリと影から呟かれた声に、横たわる青年がピクリと体が反応した


「っ!……けて……た…す……たの…っ!」


おそらく視界さえも遮られてる青年は、気配を頼りに必死に訴えて来る。


当然の反応だが、影は嘲笑った

よりによってコノ自分に助けを求めてくるとは。


「……オレが、どのような存在か分かって言ってるのか?」

「だ、だれで…もい…い…っ!し、に…たくない…っ!」

「お前は大きな代償を支払う事になるだろう。それでも良いなら助けてやってもいい」

「は、い…っ!…だから…っ!」


死にたくないなら誰もが頷くだろう。

そうでなければ、死神は声など掛けたりしない。


誰よりも生に執着し、死の際を彷徨う者にしか姿を現さないのだ


「いいだろう。この瞬間から、お前はオレの下僕へと成り下がる」

「は、は……い……」

「良い返事だ」


影はニィッと不敵に笑みを浮かべると、青年へと手を翳した


「お前は今後、後悔する事になるだろう」

「………」


最後まで影の言葉が耳に届く事なく、青年は意識を手放した

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死神と下僕達 赤木 水月 @mitsuki56

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