幕間 ~これがあのサービス回!?~
私はドキドキしていた。
かなりドキドキしていた。
すぐ目の前にバーグさん。
彼女は今まさに私が投稿した作品『勝手に(推)しやがれ』をノートPCで読んでいる。真剣なまなざしはまさに編集さん。時折眉をひそめているのも気になる。
だが気になるのは、ドキドキしているのはそこではない。
バーグさん。お風呂上りのバスタオル一枚の姿だったからだ。
(これがアニメとかでいう『サービス回』ってやつか……)
ゴクリ、とブラックペッパー君に唾は出ないのだが、なんとなく唾を飲みたくなる光景である。
一応描写を続けると、風呂上がりで濡れたままのうなじ、まだほんのりと湯気が上がるすべすべの肩、胸の前で簡単に留めてある緑色のバスタオル。もちろん、丈は短い。超ミニのワンピースを着ているようなものだ。そんな彼女が目の前で正座して座っている。もちろんふろ上がりだからバスタオルの下は……
「うーん、ちょっと足りないですねぇ。というか、自分でも分かってると思うんですけど、なんかイマイチでしたよね?」
バーグさんはノートPCをぱたんと畳んだ。思いのほか鋭い眼光。なんとなく冷徹な光を放って私を見つめている。これは……ガッカリさせたようだ。だが心当たりはある。だってあのお題、とにかく難しかったんだもん。なんにもアイデアが出なかったんだもん。みるみるヨコシマな気持ちも沈んでしまう。
「ですね……わかってました」
「でもまぁそういう時もありますよ! まだ先は長いですし、とにかく最後まで書ききるのが大事ですからね!」
「はい、すみません」
「いえいえ、謝罪なんてしなくていいんです。次で良いのを書いてくださいね」
「はい、頑張ります!」
「精神論だけじゃダメですよ。具体的になにを伸ばすのか、何を意識して書くのか、そういうところが大事なんです。まぁ受け売りですけど」
「ごもっともです」
「今回、久しぶりに小森さんが出てきましたけど、彼の良さがイマイチ生かせてない感じでした。せっかくのいいキャラクターなのにぶれてるっていうか。少なくともあたしは小森さんってキャラクターが出てくるとすごく期待しちゃうんです」
「むしろ小森君というキャラクターにファンがついているとは予想外でした」
「そういうところですね、キャラクターに愛着が足りないんじゃないですか?」
「まぁ交流のある人から名前はもらっていますから、愛着というか思い入れはあるつもりですが……」
「これはあたしの勘ですけれど……勘……そうだ! 次のお題はこれで行きましょう!」
「え? 今決めたの? 今回のテーマ? そんなんでいいの?」
「はい。まさにピンときました! 次のテーマはずばり【第六感】、これしか考えられません! これはもう関川さんのためのお題ですからね!」
「そ、そうですか?」
「ついでに言うと、これで小森君をテーマにもう一度書いてみたらどうでしょう? きっといい作品になると思いますよ! というかそれで書いてくださいなっ!」
バーグさんは立ち上がりながらそう言って、最後にびょこんと足を曲げた。
と、うつむいた私の視界にふわりとバスタオルが落ちてきた。
「きゃっ!」
バスタオルはふわふわのドーナツのように床に丸まっている。
ひょっとして今のバーグさんは……
ああ、これだけは第六感を働かせなくとも分かる!
今のバーグさんは、今のバーグさんは!
瞬速でジャージ姿になっていた。
「では、これから悠木先生の原稿を取りに行ってきます! ということで、関川先生、頑張ってくださいなっ! 行ってきます!」
またもやバーグさんはあっさりと出かけてしまった。
「はぁ。小森君で第六感か……バーグさんの言う通り、まずは書いてみようか……」
といういきさつで書いたのが、続く【小森君の第六感の冴えた一日】である。
サービス回だったせいだろうか?
これはなかなかよくかけたと思う。
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