幕間 ~バーグさんが語る謎~

 私はパソコンを前に腕組みし、スイッチをつけようかどうか迷っていた。

 たぶんこのスイッチを付ければ、またバーグさんが現れる。

 現れたらきっと新しいお題を出してくることだろう。


 だが正直、ちょっとついていけなくなっていた。

 連作短編にすれば書きやすいだろう、なんて甘かった。

 毎度毎度ベクトルの違うお題に振り回され、ジャンルごとに一から話を考えねばならないのだ。


 もはや苦行に近い。

 これはそろそろ止め時ではないだろうか?

 だが彼女にそれを告げるのはちょっと可哀そうな気もする。

 でもやっぱり背に腹は代えられない。

 だってホント大変なんだもん。


 そもそもバーグさんと会話してるって時点で、心が病んできている気もするのだ。大丈夫か、オレ? と自問自答もしたくなる。

 それでも、やめるならちゃんと彼女に伝えるのが、面と向かって言うのが筋というモノだ。


「というわけで、バーグさん」

「はい、関川サン、次のお題ですね?」


 現れたバーグさんはさらに進化らしきものを遂げていた。

 今回はイラストがCGで動いているような存在になっていた。

 なんというか白々しくパチパチとまばたきしたり、息を吸うたびに胸が揺れていたりというアレだ。

 だがポリゴンよりはかなりいい。


「いえいえ、その前にバーグさんに大事な話があります」

「実は私にもあるんです」


 え? そうなの?

 ちょっと想定外。完全に出鼻をくじかれてしまった。

 だがまぁ、こういうのはレディーファーストというもの。


「ではバーグさんからどうぞ」

「はい、実はですね、この企画、裏があるんです」

「ウラ?」

「はい、実はもう一つ目的があるようなんです」


 正直に言うとあまり興味はなかった。

 だがバーグさんは興味津々で目をキラキラさせている。


 ダメな作家と敏腕編集さん。

 ものぐさ探偵とその助手。

 はたまた狂気の科学者と美人助手

 そんな感じの構図。

 

 そして私はそう言う構図にすごく憧れていた……


「なるほど。大体の事情は呑み込めました。つまり10回を書ききることで謎が明らかになると」

「まぁそんな感じです。関川サンならきっとやり遂げるはずだと、わたしは信じてます」


 この展開はさすがに予想外。


「で、今回のお題は?」

「それは【ルール】です」


「ルール、なるほどね……」

 つまり北乃家にルールを作ってやればいいわけだ。


「いいでしょう、もう少し付き合ってみましょう」

「さすがです! ちなみに締め切りは明日。会社があるなら今晩のうちに書いてくださいね!」


「え?」




 ……とまぁそんないきさつで書いたのが、続く5作目。


『両親へのご挨拶崩壊とルールの話』


 初めて締め切りの怖さを知った作品である。

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