2 三者三様入院理由
「……一応聞くけど、なにやらかしてそんな事に」
「俺が悪い前提で話進めるの止めてくれませんか? ……いや、まあ俺が悪いんですけど」
そう言ったルークは軽くため息を吐きながら言う。
「俺……彼女いるんですよ」
「自慢か?」
「……いやアンタそれ言える立場じゃないでしょう。それこそEXランクの美少女二人と仲良くしてるんですから。同じことを非モテ連中の前で言ってみてください。嫉妬で殺されますよ」
「そう……だな。うん、俺言える立場じゃなかったわ」
うん、本当に。それは間違いないよ。
「こういう時素直なのは結構ポイント高いですよね……まあとりあえずこの場においては安心してください。俺が嫉妬でクルージさん殺すような事は無いんで。なにしろ俺、モテますから」
……でもやっぱコイツには言って良いんじゃねえかな。
なんか腹立つぞオイ。
「そう、全部俺がモテるのが悪いんです」
うん、マジで腹立つわ。
「これでも彼女に一途なつもりなのに、ちょっと女の子に話し掛けられるの続いただけで包丁持ち出してきて……浮気なんてしてないのに。するわけないのに」
……なんか一転して可哀想になってきたな。
「えーっと……何も知らない部外者がこんな事言うのは良くないかもしれないけどさ……別れれば? それで刺して来るなんてもう完全にその……アレじゃん」
もっとも俺が言わずとも別れているかもしれないけれど。
そもそも日の当たる所に今現在いないのかも知れないけれど。
「とんでもない! 彼女は普段、俺なんかには勿体無い素敵な女性なんです! そうじゃなかったら、無理心中しようとする彼女を無傷で止めて、説得してなだめて、それから罪を負わないように軽く工作して、王都の外でモンスターにやられた事にして病院来てないですよ俺!」
「……」
なんか自慢かとか文句言ってごめんなぁ……。
「……モテる男は辛いなぁ」
そうだな。辛いよなぁ……。
分かるよ……分かったよ。
休め……今はゆっくり……!
と、なんかルークの苦労に泣きそうになっていた時、再び病室の扉が開いた。
「し、シドさん!?」
病室に入って来たのは、最強のパーティーに所属する剣士の青年。
俺達と同じ入院着を着て、腹を押さえながら血色の悪い表情を浮かべているシドさんだった。
「や、やあ。なんだか見知った顔で固まったみたいだね」
そう言って笑みを浮かべるが、その表情からは気力を感じられない。
……というかなんでこの人まで入院しているんだ?
モンスターとか魔獣……もしかしたらあの黒い霧にやられるような事でも……いや、でもこの人無茶苦茶強いだろうし、そもそも長期の依頼明けだったよなこの人……
……まさか。
……まさかこの人もなのか?
シドさんも男一人に女性二人で固めたパーティーだ。
ルナさんとアスカさん。
シドさんを含めた三人の具体的な関係性は分からないけれど、十分に起こる可能性がある。
……具体的には腹。それもしかして刺されたんじゃないか!?
「し、シドさんはどうして入院なんて……」
正直踏み込んで良い話なのかは分からない。
だけどそれでも気になって仕方がなくて。
恐る恐る踏み込んだ。
「そう……だね。なんて言えば良いのかな」
シドさんは言い辛そうに視線を僅かに逸らしながらそう言って、それでもやがてポツリと呟くように言う。
「生牡蠣なんて食べるんじゃなかった……」
「あ、そうですか。大変でしたね」
……すっげえどうでもいい。
俺の心配返してくれないかな。
いや、怖いんだけどね食当たり。
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