28 携帯食料

 あのサンドベアーを倒した以降は二回程それ程強くないモンスターと遭遇した位で、特に危なげもなく進む事ができた。

 故に日が沈んだ頃には結構な距離を稼げたのではないかと思う。


「……お腹空きましたね」


「そうだな。まあ結構良い時間だろ……この辺で休憩入れて飯にするか」


 そう言った俺は、馬車の荷台から体をのりだし運転中のグレンに言う。


「おいグレン。そろそろ飯にしねえ?」


「そだな。確かに腹減ったし」


 そんなやり取りを交わした後、グレンが馬車を止めにかかる。

 さて、これで今から晩御飯……な訳だが。


「……がしかし、ご飯食べるぞってなってここまで気が乗らないのも問題だよな」


「……携帯食料、本当に微妙な味しますもんね」


 とりあえず出先で食べられる物として持ってきたのは携帯食料だった。

 スティック状のクッキーの様な物で、腹持ちも良く栄養バランスも完璧。とりあえずこれだけでも生きていける様な、凄い食品ではある。

 だけど味よりも機能性に重きを置いてあり、はっきり言っておいしくない。不味くはないけど美味しくもない。

 いや、どちらかといえば不味い方に傾いてる感はある。

 だからこそ、よっしゃ飯だとはならない。

 ならないが故に出発準備の間に取ってきた昼食は普通にうまい物を食べてきた。

 ……うん、ほんと美味しくないよな、これ。

 パサパサだし……うん。

 まあ本来なら止まらなくても食べれるのだけれど、なんかもう……せめてコーヒー位欲しい。だから止まって食べる。

 実質的にコーヒー休憩についでに携帯食料入れてる感じだ。


 うん、色々考えたけど、おいしいご飯が食べたい。


 と、そう思った時だった。


「ふっふっふ。二人とも。そんな物食べる必要なんてないっすよ」


 リーナが不敵な笑みを浮かべる。


「必要ないって……でもリーナさん。おいしくなくてもお腹は好きますし……」


「そうっすね、お腹は好きます。何か食べないとってのは分かるっす。でも何もそんな美味しくないものに拘る必要ないんすよ」


「拘るも何もこれしか……ってちょっと待て」


 一つ疑問に思っていた事があった。

 なんかリーナの荷物が明らかに俺達よりも多かったんだ。結構がっつり持ってきてたんだ。

 ……もしかして。


「……お前、もしかして」


 俺は一つの仮説に辿り着いた。

 携帯食料に拘る必要はない。

 そしてその荷物量。

 ……まさか。


「なければ作ればいいんすよ」


 予想が当たっていた。

 リーナの奴、この状況を見越して……食材と調理器具持ち込んでいやがった!


「さて、今日私あんまり活躍してないんで、いっちょここて存在感出しとくっすかね」


 リーナ曰く料理はできるらしいが、実際どの程度の実力なのかは見たことないから分からない。

 だけど今の俺にはリーナが神に……いや、女神に見えて仕方がなかった。


 ……いや、ね。そんだけ携帯食料不味いんだよ。

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