8 刀の価値

「最強のパーティー……」


「ええ。そう言われているのをよく聞きました。実際にどのくらいの強さなのかは分かりませんけど」


 ……まあ実際にそう言われているのだからそうなのだろう。

 そうでもない人間ならば、そんな噂にはならない筈だから。

 なんかよく分からないけれど……風格がある気がする。


「うわ、見たっすかあの報酬額。札束。ガッツリ札束っすよ!?」


「まあなんか二ヶ月の長期の依頼って言ってたし……いや、でもそれにしたって」


「彼らの受けていた依頼はSSランクの依頼ですね。長期なのもありますし、やはりあの位にはなります」


「……すげえな、SSランクの依頼って」


 Sランクでもとんでもない難易度でとんでもない報酬額だと思ったが、更にその上。一体どんな依頼こなしてきたんだあの人達。


 ……本当はアリサも、不幸スキルなんてのがなければあっち側の人間なのかもしれないな。


 と、そんな事を考えていた時だった。

 向こうのパーティーの刀使いの女の人がこちらに気付いたのは。


 なんだか本物ならとんでもない価値があるらしい俺の刀に気付いたのは。


「……? ……!?」


 そして遠方から二度見し、無茶苦茶驚いた表情を浮かべた後……こっちに凄い勢いで走ってきた!?

 そして俺の目の前にまでやって来た刀使いさんは、凄い目を輝かせて言う。


「こ、これは倶利伽羅シリーズの刀ではないか! しかも間違いなくレプリカではない!? 贋作じゃないではないか!? うわぁ、まさかこんな所でお目にかかれるとはぁ!」


 なんだか凄く嬉しそうにそう言った刀使いさんは、俺に視線を合わせて言う。


「お主がこの刀の持ち主か?」


「あ、ああそうだけど……」


 というか近い近い! この人興奮してパーソナルスペースおかしな事になってる!

 と、なんか恥ずかしくなってきたので、視線を反らそうとした所で……懐からそれが取り出される。


「すまない、頼みがある……それを私に売ってくれ!」


 そして出てきたよ……さっきの札束ぁッ!?


「え、ちょ……えぇ!?」


 ちょっと待って、嘘だろ……えぇ!?


「す、凄い大金っすね……」


「ど、どうするんですかクルージさん」


「と、どうするって……」


 言ってから俺は少しだけでも落ち着く為に深呼吸をする。

 ……どうするのか。どうするべきか。

 正直ビビる位の凄い大金である。

 そしてこの金額があれば、新たに武器を新調する事もできる。使い勝手がよくて気に入ってるけど、この刀の価値を全く理解していなかった訳で……双方のメリットを考えれば悪くない話なのかもしれない。


 ……だけど。


「……すみません。丁重にお断りします」


 俺はそう言って頭を下げた。


「き、金額が足りなかったか? なら今貯金を切り崩して……」


「あ、いや……いくら金積まれてもこれは売れないです」


 だってそうだ。

 まともな市場価値は分からないけれど、それでも。


「これ、多分ある程度価値を知ってる俺の親友が譲ってくれた奴なんで」


 俺にとっては例えナマクラ刀でも価値がある代物だから。

 ……これは、売れない。手放せない。


「……そうか」


 そして俺がそう言ったのを聞いて、刀使いさんは凄く残念そうな表情をして。

 そしてその後、笑みを浮かべて言う。


「それなら仕方がないな。だったらそれは手放しては駄目だ」


 言いながら刀使いさんはお金を懐へ仕舞う。


「すみません、そんなにお金積んで貰って」


「良いよ。これをそういう理由で断れたのなら、お主がそれを持つべき人間だ。大切に使ってやってくれ」


「あ、はい」


 ……持つべき人間か。

 そんな事言われる実感湧かねえな。


「……しかしそれを譲るとは、お主の親友は神か何かか?」


「いや、人間ですよ普通に」


「いや、だとしても神に近い何かに違いないな」


 おいすげえぞグレン。お前の知らない所でエロいスタイルの美人さんに神扱いされてんぞ、良かったな。

 と、そこでもう二人近付いてくる人影があった。


「おーいアスカっち。どしたん?」


「何してるんだい?」


 近付いて来たのは短く纏めた金髪ツインテールの少女と、青髪の青年。

 アスカと呼ばれた刀使いと一緒にいた最強のパーティーの残り二人。

 つまりは……俺達の前に最強のパーティーのメンバーが勢揃いした事になる。

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