【48話】闘技大会予選(1)


 闘技大会当日、予選に出場する各選手にルールの説明が行われた。

説明を受けている場所はコロッセオにある選手控え室だが、基本的にはただの最終確認であり、細かいルールに関しては出場登録の時に受けている。


 大会中の勝敗についてはリングアウトか、審判の判定、また降参によって行われ、殺しは即失格。

また、武器や防具などの装備類については持参自由で、毒物や回復薬などのポーション類については禁止らしい。

魔法的な効果による装飾品についてはポーション判定にならないようなので、そういった効果の物を持ち込みたければ装備に付与しておけという事だろう。


 聞いたところによると、魔剣や聖剣の類にも似たような効果を持つ装備もあるらしい。


 最後に予選の対戦方式だが、基本的に大勢の集団によるバトルロイヤル方式だ。

組み分けは大きく二つに分かれ、俺とディーのAグループ、サーニャとアザミさんのBグループでの集団戦となり、それぞれのグループの上位3名あたりが本選に出場とのこと。


 参加している選手は全員Bランク以上だし、一グループに三十人程度の猛者たちが集まっているため、普通にやれば勝ち残るのはそこそこ骨が折れそうである。


「ま、普通にやればね」

「そうだな、普通にやればだな」


 俺はディーと顔を見合わせ、お互いに悪戯小僧特有の笑みを浮かべる。

当然俺は親友とペアを組み予選を勝ち残る算段をしている訳だが、今回の作戦はそれだけではない。


 そもそもこれが集団戦闘である以上、何人かと裏で示し合わせるくらいは常套手段だし、何も不思議ではないのだ。

しかし俺には固有技能ユニークスキルという裏技が存在するし、基本的に多くの魔族が得意とする闇魔法にも適正がある。

それに加えて今回用意した魔法銀ミスリル製の魔剣が加われば、鬼に金棒と言う訳だ。


「結果的には情報屋龍人のグラヴにかなり頼った力だけど、まあそれも含めて実力だよねぇ」

「こんな予選で消耗したくないからな。まあいいんじゃねぇの?」

「ふむふむ? ルーケイドさんとディーさんは何か作戦があるようですね。Aグループの試合、期待していますよ! ルーケイドさんなら優勝もありえるかもしれません!」


 俺達の会話にアザミさんが混ざり、激励を飛ばしてくる。

まあでも極端な話、俺の目的はこの大会で目立つことで優勝ではないのだが、それでも出番が巡ってくるチャンスが多い程良いので、勝つに越したことはない。


「こら犬っころー、アンタはこっちグループの心配をしなさいー。せっかく決着をつけるチャンスなのだから、私を無視するのはよくないわー」

「えぇ!? サーニャさんは私と組んで予選突破を狙う予定では?」

「は? そんな予定は無いし、嘘はよくない」

「あぅ!? い、いえ、なんでもないですよぅ。うぅぅ……」


 憐れアザミさん、知り合いという事でタッグを組もうとしたサーニャに狙われてしまったようだ。

ただサーニャは魔法使いだし、攻撃するっていう事になるとどう足掻いても範囲魔法がメインになる。

ようするに組もうが組むまいが、その射程に参加者全員が入ってしまう訳だから、結果は同じなんだけどね。


 アザミさんはサーニャの魔法を回避するか耐えて、尚且つ敵を排除して行かなければならない事実は変わらない。

相性的に、狭い範囲で組んでも無意味という訳だ。


「大丈夫だよアザミさん。サーニャの力を借りなくても、聖剣の力があるじゃないか。きっと予選は勝ち抜けるさ」

「はぅぅぅう!? ありがとうございますルーケイドさん! やっぱり、良い匂いのする村人さんは私の味方なんですね、優しさが身に沁みます」


 俺の慰めに対し過剰に反応するアザミさんだが、その台詞に反応してサーニャの殺気が高まっていく。

まさか彼女は自殺志願者なのだろうか、天然っぷりに頭が痛くなる。


 もしこれが計算でやっているのだとしたら、かなりのチャレンジャーだな。

ある意味勇者といっても差し支えない。


 そうして、ああだこうだと言い合いながら予選の準備が整い、ようやくAグループである俺達の出番となった。


「さて、それじゃあ一気に掃除しちゃいますかね」

「おう、余りものは俺に任せろルー」


 三十名強の選手達がコロッセオの闘技台に上がり、それぞれの配置につく。

開始の合図は審判が行うので、それまでに思い思いの場所へと移動できる仕組みだ。


 俺とディーはリングアウトの危険がなく最も安全だが、別の意味では最も人が密集して危険な中央に陣取り、合図を待つ。

そして中央で構えてから数分経ったところで審判が現れ、合図を下した。


「闘技大会Aグループ予選、試合────」


 審判の掛け声と共に魔力を高め、特注のに俺の持ちうる膨大な魔力を流す。

また、同時にミスリルボール・ベータを空中に浮かべ【念力】で意識を送る事で、作戦の準備が完全に完了した事を把握する。


「──開始っ!!!」

「食らいやがれ予選組っ!!! 【黒龍の大剣グラビティソード・偽】起動!!!!」


 俺の掛け声と共に発せられた龍人グラヴのオリジナル闇魔法、グラビティプレスが起動し、ベータによる立体魔法陣がその魔法を拡散させた。


 必勝法その一、とりあえず魔法耐性のない雑魚は範囲魔法で除去、だ。


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