最強魔族転生!?~あらゆる死亡フラグを回避したら、異世界に転生した~
たまごかけキャンディー
【1話】プロローグ
──あっ、やばい死ぬ。
その直感に従い、俺の視界は空から降り注いだ
空に感じる嫌な気配の数は12、おそらくこの全てが致死の一撃だろう。
だが慌てる事はない、落ちる地点くらいはだいたい予測がつく。
まず頭上に3つ、そして前後に避けた先にこれでもかという具合に配置された花瓶が合計8つ、さらにそれを察知して避けようとし真横にジャンプした瞬間、マンションの最上階で花瓶を持っていた主婦が避けた方向へと手を滑らせるだろう。
それも投擲するレベルで。
だがらこそ、取る手段は一つ。
そう判断するや否や、ヒョイヒョイと降り注ぐ致死の一撃を回避していき、合計11個の花瓶が地面に衝突していったのを見届け、俺は真横に飛びのく。
そしてトドメとばかりに回避行動でバランスを崩した俺へ、予定通りに最後の花瓶が襲い掛かった。
そしてバランスを崩したハズの俺はなんなく体制を整え、そのまま脇道へと走り抜けていったのだった。
そう、何を隠そうバランスなど最初から崩してはいない。
飛びのいたと見せかければ、バランスを崩した地点に必ず落ちてくれるのだから、その地点で踏みとどまらなければ良いだけの話だ。
簡単な話である。
「しかし、容赦がなくなってきている」
そもそも、日常においてまずこんな状況になる事がおかしい。
まるで誰かが意図的に殺しに来ているようだ。
死亡フラグのように。
事の始めは一時間前、通勤中に突っ込んできた信号無視のトラックにはじまり、強盗やら通り魔やら暴走車両。
最後などマンションの最上階から落ちてくる花瓶とかいう無理やりな展開が俺を待ち受けていた。
しかし運が良いのか悪いのか、昔から悪運だけは強く、嫌な予感がするたびにデストラップを回避し続けてこれた。
だがこんな事もさすがにもう終わりだろう。
一生分の不運を使い果たしたに違いない。
ほら、曇っていた空も晴れていき、お天道様が──
そこまで考えた時、俺の意識は闇に閉ざされた。
──☆☆☆──
「──ィ、オ───、──ィ」
……どこからか俺を呼ぶ声がする。
気持ちよく寝ているんだから、起こさないでくれよ。
「──オ、──ィ、────ィ」
だめだしつこい、もう目が覚めてきちゃったよ。
というか、そもそもなんで寝てたんだっけ。
確かあの
そのあと、どうしたっけ?
「…………そうだ、たしか通勤中だった」
「おや、起きたかな。やぁ、元気してる? 調子はどう?」
「……はっ?」
目が覚めたらよく分からない空間に、よく分からない金髪の美青年がいた。
ごめん、よく分からない。
「うん、調子は良好みたいだね。魂にも異常は見当たらない」
「えっ、あの」
「いやー、でもホントにまいったよ。君が死ぬハズの運命で死なないから運命の歯車が狂っちゃってね、バグを修正するたびに君は超常的な避け方をするし、そのたびにまた歯車が狂っちゃってさー。君、凄いね? 僕の予想を悉く覆すなんて、もはや邪神級だよ!」
「…………」
なぜだろう、この美青年の顔をどうしても殴りたい。
いや、なんとなく言っている事は分かるが、でもなんだろう、感情が納得いかないぞ。
ようするに、結局俺は死んでしまったという事にはなるんだろうけども。
「ん? どうしたのだんまりしちゃって。ほらほら、君のためにこの席を用意したんだからさ、立場を気にせずフレンドリーにいこうよ。無礼講って感じで。部下たちが大勢いる天国じゃ、こうはいかないんだからさ」
「はぁ。なるほど」
だんだんと状況が飲み込めて来た。
天国やらなんやらと言っている事を察するに、この美青年は神様みたいな感じの人で、なんらかの理由で死んだ俺にアポを取りに来たって事だろう。
なんで死んだのかは分からないけど、普通の死に方でないだろうな。
なにせわざわざ神様が会いに来るんだから。
無礼講って言ってるし、そこらへんの事を聞いてみようか。
まさかとは思うけど、一応ね。
「あの、結局俺は何で死んだんですか? というか、これからどうなるんです?」
「あーそれね。君どうあがいても死にそうになかったからさ、結局僕が殺したよ。バグの修正のためにね。あぁーでも、分かってる、分かってるって! だからその拳を振り上げないで! 本題はここからなんだよ! 大丈夫、ちゃんと考えがあるから!」
「ふーっ、ふーっ!!」
嫌な予感はしていたが、やはりこの神が俺に直接手を下したらしい。
なんて奴だ、こいつこそ本当の邪神なんじゃなかろうか。
「……落ち着いたかい? いや、本来は死を回避したくらいでバグが発生するなんてありえないんだけどさ、今回はたまたまバグと君の回避行動がシンクロしちゃって、本当にどうしようもなかったんだ。そこは本当にごめん、謝るよ。しかしいくら謝ったところで君の人生は返ってこない。こちらのルール上、死んだ者を同じ世界に生き返らせる訳にもいかないしね」
「……では、どうすると?」
「うん、だから僕は考えた。同じ世界で生き返れないなら、他の世界ならいいんじゃないかってね!」
ババーンッ!
という感じに胸を張った神様が、ドヤ顔で宣言した。
つまり、どういう事なんだ。
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