【地上人】うたびとアリオン

藍色

第1話 プロローグ

かつて海でおぼれたことがある


肺の中まで海にひたされて、おかされて

空か水面か海底か

それすら分からなくなった時

力強い手に引き上げられた


涙と海水ににじむ目に見えたのは水色


気づけば浜に打ち上げられていた

己の手に残ったのは、紅いリボンがひとつ


漁師仲間は幸運だったなというだけだったが

崖の上に住む老人は

はるか昔に別れた同胞どうほうが助けてくれたのだろうと笑った

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