第10話
南門に行くと、既にレイラが待っていた。今度も汗ダラダラで、さっきせっかく整えた息も、また荒々しくなっている。
「悪い、待ったか?」
「ううん。大丈夫。それで……なんか服装変わったね」
「お前も言えねーだろ」
レイラは、前回のネペント戦で服を失ったので、新しくなっている。俺が破いたからじゃないかって? あ、あの時はしょうがなかったんだよ!
といっても、大きな変化はない。少し模様の入ったローブに、ローブの隙間から見えるベルトや、純白のワンピース、あと短剣とポーチ。前回と変わったのは、ローブに模様が少し付いたことと、ローブの下が白いワンピースになったことくらいだ。
「……そのワンピ、動きにくくないのか?」
「大丈夫、問題ない」
息を切らしたまま、グッドサインを見せる。
「そっか。よし、早いうちに行こう。村から早めに離れたい。息切らしてるとこ悪いけど、少し早歩きで行くぞ」
「任せて……はぁはぁ……」
とりあえず、見張りのいない南門を抜けて、村の外に出る。見張りがいるのは北門くらいで、他の門は大抵の確率で誰もいない。
「……森に入るぞ」
「うん……」
静かな声でレイラに話しかける。そして、門からまっすぐ続く道の脇の、森に入る。そういえば、このコートの魔力付与効果って、どう使えばいいんだ?
「レイラ……近付いてこい。一応
「……ん」
レイラが近寄ってくる。その小さい体をコートに包み、森の中をコソコソと進む。
どれくらい行っただろうか。現状、バレる気配はない。そろそろ西門に着いてもおかしくはない。
「あ……あれ」
レイラが指さした先にいたのは、西門の前に佇む、数人の商人だった。このまま進めば、商人たちにも、交渉をしているだろう村人にも見つかるだろう。しかし、俺は進むことにした。このコートの効果を試すには、もってこいだ。
「……行こう。なんとかなるよ」
そして、俺はレイラを包んだまま、道を少し早足で横切った。横目でバレていないか確認をしながらだったが、どうやらバレた気配はなかった。
「……効果絶大だな。こりゃ、役に立つ。ありがとな、父さん、母さん」
「このコート、凄いんだね。今のでバレないってことは、そうとうな効果だよ」
「みたいだな」
俺たちは小さく話し合って、もう一度歩みを進める。
更に同じくらい歩いたところで、北門から続く、道が木々の隙間に見えた。人はいない。好都合だ。
「……今のうちに離れてしまおう」
「……うん」
さっきと同じ姿勢のまま、少し速度を上げて、村から距離をとる。もし、監視役が双眼鏡などを持っていたらまずいので、村が完全に見えなくなるまで進むことにする。
十分弱歩いた。そろそろ、村が見えなくなりそうだ。
「……最後に、見ておかなくていいか?」
「大丈夫。村は何度も見てきたから、頭の中にしっかり刻まれているから。レンこそ、いいの?」
「ああ。俺が思い残しとしてあるのは、エミと母さんだけだからな。村については、そこまで思い入れはないよ」
「じゃあ、あとちょっと離れよ。そうしたら、後は進むだけだから」
俺らは頷き合って、もう一度進む。そして、どんどん木々の隙間から見える村は小さくなり、とうとう地平線に消えた。
レイラをコートから出し、揃って背伸びをする。歩きやすい姿勢だったつもりだが、結構負担がかかっていたらしく、背骨がポキポキと鳴った。俺のだけ。レイラは可愛らしく「んううぅぅぅ〜〜……」と声を出している。
「そういや、お前寝不足なんじゃないか?」
「ゔ……ちょっとそうかもだけど……頑張って今日は歩く。夜は早めに寝たいけど……」
「分かった。じゃあ、今日は出来る限り進んで、日が暮れだしたら早めに休もう。これからはしばらく歩き続けるからな。初日でくたばっちゃしょうがないしな」
「うん」
こうして、十三歳のレベルの上がらない魔法剣士と、十歳の特例魔法使いの旅が始まった。
「──そういや、お前ロッドは?」
「ポーチの中にあるよ。吊るす場所ないからさ」
「そっか」
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